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2016/10/8 館長連続講座(第1回)が行われました。

 阿刀田館長が、館長連続講座「やさしく、楽しい源氏物語」の第1回講義を行いました。第1回のテーマは、『今、なぜ「源氏物語」か』でした。
 
 阿刀田館長は小説家になる以前をふりかえり、肺結核の療養所で欧米の短編小説を読みあさった体験が後に役立ったことや、小説家になろうと考えたのは30代の半ばを過ぎてからで、若いころの習作は少なく、「読んでいれば書ける」を実践したようなところはある、などと話しました。

話をする館長の様子
(話をする館長の様子)
 
 講座では、今期の連続講座でどうして「源氏物語」を取り上げたかについて、成立からほぼ約千年であることを期に日本人として接してもらいたいこと、また、館長自身が実作者であるという立場から、今まで語られてきたものとは違う視点で見る「源氏物語」を伝えたいことを話しました。そして、参加者には講座を聴くだけではなく、クリエーションに役立ててほしいと語りました。
 
会場の様子
(会場の様子)
 
 館長は、小説にあるべき3つの要素として、「ストーリー」、「リアリティ」、「モチーフ」を挙げました。「ストーリー」については、大人の鑑賞にたえるものであり、説話はストーリーと言えるものではないこと、「リアリティ」については、フィクションであっても現実と思えるような現実らしさを表現すること、そして「モチーフ」は物語を通して「言いたいこと」であると話しました。この3つの要素が揃ったのが近代小説であり、源氏物語は千年昔の物語でありながら特に「宇治十帖」ではこの要素を備えた物語であると評しました。また、「源氏物語」に各帖がばらばらに書かれ、成立もこの順序ではないという説があることや、登場する795首の和歌について、紫式部は上手い歌を詠むだけではなく、わざと下手な歌を詠むという技術があったことにも触れました。