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2018/1/13 館長連続講座(第4回)を開催しました

 館長連続講座「小倉百人一首を楽しく」の第4回講義を行いました。第4回のテーマは、『文学と恋』でした。
 
 講義では、文学とはまず初めに詩歌があり、詩歌が民衆の支えであったと話しました。詩歌に踊りが入り、役割が生まれ、物語的になることで、演劇となりました。日本でも、万葉集などの短い歌があり、猿楽や能、そして歌舞伎が生まれました。小説の誕生は、それよりずっと後、文字を読む力、紙、印刷技術の発達が伴うことで生まれたと話しました。現代小説は19~20世紀のフランスがリードしていましたが、これには17世紀のルイ王朝時に成熟したフランス古典劇があったことが関わるとし、三(時、場、筋)一致の法則を守る、その法則を破る、あるいはまったく次元を異にするクリエーションの方法があると語りました。

話をする館長の様子

(話をする館長の様子)
 
 
 日本の歌は、まず万葉集に見られるような日常を自然に詠む詩歌がありました。これが、宮廷社会でどう変わっていったかについて、館長はイマジネーションの変化があったと語りました。「こうなったらどうだろう」というようなフィクションが古今和歌集で生まれ、新古今和歌集のころにはっきりしてきたと話しました。貴族社会の洗練されたイマジネーションは、武士社会で衰退し、日常を真っ直ぐに見つめて詠む俳句が栄えたことを挙げ、俳句が短詩系日本文学の中で「次元を異にする」クリエーションとなったのではないかと語りました。
 

会場の様子
(会場の様子)
 
 百人一首の一般的な分類では、恋の歌と秋の歌が多いとし、88番「難波江の…」や、19番「難波潟…」、54番「忘れ路の…」を挙げ恋の歌について語りました。また、恋の幸福と恋の美学について語りました。恋愛は長くは続かず、素敵な恋が素敵な結婚にはならぬようであり、異質の幸福を求めていく必要があるのではと話し、恋の美学は「恋として素晴らしかった」と過去形で語られるべきだと語りました。