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2019/6/6 韮崎工業高校で出張トークを行いました

 令和元年6月6日(木曜日)、県立韮崎工業高等学校で出張トークを行いました。全校生徒約500名を前に「言葉を学ぶこと」と題して、生徒ひとりひとりに話しかけながら講演しました。生徒達はリラックスして面白そうに話しを聞いていました。
 話の冒頭、館長が生徒達に「最近、何読んだ」と聞きましたが、純真な生徒達は恥ずかしがっていて、なかなか答えが返ってきませんでした。続けて、「英語は好き」と聞きて、恥ずかしがり屋だと英語は上手にならないこと、人見知りせずにどんどんしゃべることを勧めました。そして、話をAIに移し本題に入りました。


話をする金田一館長の写真(話をする館長の様子)
  

 平均寿命が90歳だとしたら、皆さんは16歳位だから、あと74年位生きていくことになる。これから長い人生を生きていく上で今一番考えなくてはならないのは、おそらく、AIという存在になる。これからの世界は、AIでかなり変わっていく。教科書では習わなかったことに対処せざるを得ない場面が生じてくる。

 例えば、医療面では、従来のような役割の医者は要らなくなる。現在の医療は変わっていき、AIが診断を行い、どのようにして治療するかを決定していくようになる。

 また、金融面では、今のような銀行はなくなる。既に中国では、お財布(現金)を持っている人はほとんどいない。屋台でもタクシーでも全部、スマホで済ましてしまう。このように、皆さんのやりたいと思っている仕事は今後なくなるかもしれない。

 「ゴルゴ13」に出てくる"殺し屋"(スナイパー)も要らなくなる。ドローンを使えば簡単に人は殺せてしまう。プログラミングする技術があれば殺せてしまう。だから兵隊は要らなくなる。殺された話はできるが、殺した話は聞かない。人を殺したことは殺した本人を深く傷つけてしまう。老人になってもトラウマで精神病院に入っている元兵隊の人がたくさんいる。そういうつらいことをコンピュータにさせるようになる。

 また、外国語に関しても自動翻訳機が進歩、普及してくるから英語を勉強する必要がなくなる。そうなったら英語の先生は失業してしまう。

  一方、AIには弱点があり、できることには限界がある。ひとつの尺度で物事を判断する、決めることはできるが、最終的に良いか悪いかを判定することが人間だった場合には、AIは勝てない。例えば、囲碁で勝ったり、試験で高得点を取ることはできるが、美しいもの、美味しい料理はAIには作れない。なぜなら、美しいか、美味しいかどうかを決めるのは人間だから。同じように、やさしく看護するといった仕事はAIにはできない。

 今までの文明社会では、コストパフォーマンスを高めることを中心に考えてきたが、そういう時代は終わる。

 中国では、店員がいないコンビニエンスストアが増えている。しかし、自動化されてすごく便利でいいと思うかどうかは疑問である。只々機械的なだけでは面白くない。それだと大量生産の機械の一部品みたいになっていく。直に店員、人と接する方がうれしいということがある。

 人間は"交換の原理"(効率、見返り、損得)だけを考えて生きているわけではない。 リニアができて甲府から東京まで15分で行けるようになっても、節約できた時間だけゆっくりと過ごせるかというとそうではない。本来、便利になる分はゆっくりできなくてはおかしい。もっと、便利さだけでなく、人間の温かみを感じる社会になればいいと思う。

 能率、儲けだけを求める生き方は人間を不幸にする。皆さんが今後生きていく時代では、そうでない生き方ができる可能性がある。

 自分は高校の頃、憂鬱なことばかりだったので、頻繁に学校を抜け出し、ほとんど授業を受けていなかった。大学を出てからも引きこもって本を読んでいた。この中にそういう人がいたら早く大人になってもらいたい。大人になると気持ちが楽になっていろいろなことを楽しめるようになる。いろいろな人がいてもいいし、みんなと同じでなくてもいい。 

  日本では、みんなと一緒になる方がいいと思われているが、みんなと一緒にならなくても構わない。なっていると楽であるが、結局、自分のことは自分で決めなくてはならない。

 本を読むといろいろなことがわかる。こんなことがあるのかとか、こんなやり方があるのかとか、そういうことを本は教えてくれる。

 大量生産されたもののように生きていくことがいやなら、本を読んでいろいろな世界を知ることが大事。井の中の蛙にならないために、外国にいくのもいいことだ。広い世界があることを知ると楽になる。

 好きな事を見つけること、好きな仕事を見つけること、マニアック、中毒みたいなもの、どうしてもやりたいこと、やめろといわれてもやめられない、そういうことを早く見つけること、それが人生の成功のコツだと思う。

 




会場の様子の写真
(会場の様子)
   

 最後には、生徒からいろいろな質問が出ました。「お薦めの本は何か」という質問に対し、館長は「綺麗な日本語を読んでもらいたい。谷川俊太郎、井伏鱒二がいい。何か思い出したら読んでほしい。」と答えました。また、身近なことでは「朝食は何を食べているのか」、他に「彼女はいたのか」、「尊敬する人は」、「果樹農家はAIに勝てるか」、また、「力の正しい使い方」、「死んだら主観はどこに行くのか」といった興味深い質問もありました。

 講演会終了後も積極的に館長に近づき、自分の関心ある事柄に対して意見を聞く生徒もいました。