ホーム > 金田一館長の部屋 > 2019/2/23 南アルプス市立中央図書館で出張トークを行いました

2019/2/23 南アルプス市立中央図書館で出張トークを行いました

 平成31年2月23日、南アルプス市立中央図書館で館長出張トークを行いました。約80名の地元市民の皆さんに「日本語おもしろ塾」と題して講演しました。笑いの絶えない楽しい講演となりました。
 




話をする金田一館長の写真(話をする館長の様子)
  

 昨日、県立盲学校を訪問し、盲ろう教育のことを勉強させてもらった。昭和29年に目の見えない耳の聞こえない子供に普通の生活をさせてやりたいということで、心理学的、科学的にどうやって言葉を教えたのか、また、どのように様々な訓練をしたのかについてお話しを聞かせてもらい、貴重な資料をみせてもらった。その資料を電子化して県立図書館に残せればと考えている。

 目の見えない人には、とんでもない能力がある。足音で○○先生かが分かる。この前、住宅街で車を運転していた時に、目の見えない杖をついた人が道路を渡ろうとしていたから、「どうぞ」と言ったら、「金田一先生ですか」と返された。どうして声だけで分かるのか驚いた。また、ある人が2年ぶりに目の見えない生徒に会いに行ったら、「先生、2年前と同じ服を着ている」と言われたそうで、それは、匂いで分かったそうである。

 今までは、盲ろうの人が普通の人の世界に入って来られるように訓練、教育しようということであったが、そうではなく、盲ろうの人はその人たちの世界があり、その人たちから私たちが学べることがあるのではないかと思う。音、匂い、味覚、気配などは、私たちより分かるので、もっと、いろいろなことを勉強するようにしてもらいたい。例えば音楽など。津軽三味線の名人である高橋竹山氏、シンガーソングライターの長谷川きよし氏、米国ではスティービー・ワンダーなどがいる。また、東大教授になった福島智氏の例もある。そういう時代にだんだんとさしかかってきているような気がする。

 平成が終わり新しい年号ができる。次の時代に活躍できる若者に年号を考えてもらいたい。「平成」という年号は、字はいいが、音がよくない。「へーせー」と言うと何か疲れた感じがする。逆に「昭和」の「昭」は音は良かったが、字としては難しく使い道がほとんどない。また、みんなが考える年号は、まじめ過ぎで地味なものが多い。個人的には、もっと派手やかな方が好きである。元気が出るような、名前でいうと「きらら」みたいなイメージ。例えば、個人的に言うと「繚花」。「繚」は難しいし画数も多すぎるからだめであるが。

 今は、ワープロがあるから、漢字など覚えなくても足りる。初めて見た知らない言葉でも漢字なら何となく意味が分かってしまう。これが漢字の凄い点である。例えば、「調餌」(水族館で餌を作ること)、「寺主」など。

 「四面楚歌」など、難しい言葉の意味は調べれば分かるが、むしろ、やさしい言葉の方が難しい。例えば、「前」という言葉の意味はいろいろある。「机の前」、「駅の前」、「紀元前」という場合、それぞれ異なった意味あいがある。位置関係、ものが持っている方向性、近いこと、時間の進む方向性など。

 「右」と「左」を説明するにはどうすればいいのか。北を向いたときに東の方向が右という説明がある。これは、国語学者の大槻文彦氏が初めて国語辞典を作ったときに説明したことで、英語のウェブスター辞典を見てそれを採用した。画期的?な説明として、辞典の偶数ページが右で奇数ページが左と決めるというものもある。また、英語に関して、複数と単数を分けないことがある。例えば羊(sheep)、魚(fish)。  こういうことを考えて、分かった時の楽しさ、パズルを解くような楽しさを味わってほしい。新しいことを知識として覚えるだけならつまらない。知識を増やすだけなら大したことではないし、あまり意味がない。既に知識は一杯あるので、自分で新しいことを考えつく人がこれからの世界をちゃんと生きていける人である。県立図書館では、「連続講座」や「作家の講演会」などを開催しているので、聞きにきて勉強してもらいたい。

 







会場の様子の写真
(会場の様子)