
自分は、「新語・流行語」大賞の選考委員をしているが、大賞の流行語は、実際使われた言葉、流行った言葉だけでなく、世相を表すキーワードと言える。大賞のひとつに、平昌五輪のカーリングの女子チームの掛け声『そだねー』がある。日本人は議論をきちっとしたがらない。その場の雰囲気で決まる。「はい」はYESではなく、あなたの言う事は聞いたという意味。みんなが聞いて、その場の雰囲気で方針が決まる。また、個人競技で賞を取っても、皆さんのお蔭と言う。日本人の民主的、日本的な組織、グループの特性を象徴的に表している。 敬語の使い方について言えば、昔は、上下関係をはっきりさせるという意味できっちりと使っていたが、今は、何か過剰に言葉だけを大切にして使い過ぎている。言葉に対して神経質で些細な事を心配し過ぎる。父春彦は、敬語をなくしたがっていた。 流行語は、昔は社会の風潮を表す言葉だったが、今は、若者の言葉が変に意識されるようになり、どちらかというと若者のものである。若者は、流行語を使う時には恥じらいがあり、きちんとした言葉でないことを承知で使っている。また、人をみて使う。一方、大人たちは、厳格にきちんとした言葉を使いたがる。例えば、「コーヒーです」を「コーヒーになります」と言ったり、「"小体(こてい)な"佇まい」という表現を使ったり。 テレビのクイズ番組で出される漢字のレベルが上がっている。漢字を勉強することで、美しい日本語、正しい日本語を知りたいという欲求が高くなっていると思う。自分たちが普段使っている日本語が本当に正しいのか不安になっているのではないか。背景には、日本人でいることの自信のなさがあり、私たちがどういうものなのか、日本人のアイデンティティーがぐらついているのかもしれない。自分も日本語の正しい使い方についての講演依頼が多い。 年号が変わるといっても、天皇が代わるだけである。日本人は竹に象徴されるように節目が好きである。年が変わってめでたく思い新年を祝うのと同じである。年号をみんなで考えることもおもしろいと思う。次の時代で活躍する若者に募集をかけるのもよいのではないか。オリンピックのシンボルマークを考えさせるよりよいではないか。
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