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2018/2/03 館長連続講座(第5回)を開催しました

 館長連続講座「小倉百人一首を楽しく」の第5回講義を行いました。第5回のテーマは、『四季を考える』でした。
 
 講義では、近日の大寒波などに触れ、逃れられない四季の辛さとよろこびを語りました。四季の変化は生活していくには時に切ないものですが、文化の発達した国でこれほど四季の区別がはっきりしている国はめずらしく、逃れられない以上、日本人はこの四季をよろこびとしてよいのでは、また、よろこびとしていかねばならないと語りました。
 四季が国民性に与える影響は大きく、日本人の多彩な色彩感覚が庶民にまで及んでいたことを話しました。また、四季、自然が変化していくことが、うつろいゆくことへの寛大さ、あるいは諦観(あきらめ)と関連する語り、諦観文学は世界中に見られますが、日本においても根深く存在すると話しました。

話をする館長の様子(話をする館長の様子)

 
 
 和歌文学においても、この特徴が反映されており、小倉百人一首の一般的な分類において恋の歌に次いで四季の歌が多く選ばれています。万葉集の和歌は、自然に自分の思いを詠みましたが、古今和歌集、新古今和歌集では文学的な考え方が変わり、技巧的になっていったとともに、恋の歌においてフィクションが入ってきたと語りました。例えば、97番「来ぬ人を...」は定家の歌ですが、定家自身が女性を待つ時の歌ではなく、恋人を待つ女性の気持ちをイマジネーションして詠んでいます。しかしながら、四季の歌は依然としてリアリズム傾向が強く、四季の実際の様子を美しく、多彩に享受する習慣があったと話しました。
 

会場の様子
(会場の様子)
 
 講座の後半では、小倉百人一首の中から、春から秋の歌を取り上げ、解説しました。
 また、生活の中でクリエーションの心を持ってほしいと受講者に呼びかけ、自身は俳句を作りませんが、「歳時記」を愛読し創作のヒントとすることもあると話し、四季ごとの季語をまとめた「歳時記」があること自体が国民性だと語りました。