ホーム > 阿刀田名誉館長の部屋 > 2017/11/11 館長連続講座(第2回)を開催しました

2017/11/11 館長連続講座(第2回)を開催しました

 館長連続講座「小倉百人一首を楽しく」の第2回講義を行いました。第2回のテーマは、『女性たちの嘆き』でした。
 
 講義では、古くから今日にいたるまで、社会の構造が女性を幸福にしてこなかったことを語り、きらびやかな平安時代の宮廷においても決して幸福ではなかったと話しました。万葉集では素朴で明るい歌もありましたが、平安期の歌は貴族社会のもとで男性が支配する社会で生きた女性の嘆きがありました。清少納言や、小野小町など栄華を誇ったとされる女性たちであっても、寂しく哀しい最期であったと話しました。

話をする館長の様子

(話をする館長の様子)
 
 
 今回の講義では、特に和泉式部について語りました。 「紫式部日記」中の、和泉式部、匡衡衛門(赤染衛門)、清少納言の3人の評価の比較を取り上げました。紫式部は、和泉式部の和歌についてちょっとした表現にも色つやがあり、本格的ではないものの、必ず魅力ある一点があるとしました。館長は、詩人として大切なことは、学術的に、「歌とはこうあるべき」というような点で優れるよりも、和泉式部が持つこのような面であり、時代を貫き評価される所以だと話しました。
 

会場の様子
(会場の様子)
 
 また、和泉式部の歌「あらざらむ…」を取り上げました。一般に「あらざらむ」は、「この世」にかかるとされ、和歌の端書にもあるように、病にかかって死が迫るわが身を表すとされています。しかし、館長は「あらざらむ」ということばが、「この世」「この世のほか」「この世のほかの思い出」の三つのことばそれぞれかかる読み方が出来ると話し、「この世の他の思い出」が無くても、この世のものが一切なくても、一つの真実としてあなたに会えたら良いのにと詠っているようにも読めると語りました。また、和歌から着想を得てストーリーを広げた小説作品として、自身の「めぐりあひて」や、中川与一著「天の夕顔」を挙げました。