2008年頃から被害があった「ゲリラ豪雨」について知りたい。(小学3年)
回答
ゲリラ豪雨とは、集中豪雨が数㎞から10㎞四方程度と狭い範囲で、突然、短時間に起こる現象。現在の観測システムでは予測が難しい。
キーワード
■ゲリラ豪雨■集中豪雨■雨■防災■災害
調査過程
- ■気象の本には記載なし。雨や気象災害の項目に「集中豪雨」については記述あり。
- ■時事用語の本を見ると『現代用語の基礎知識学習版』2009(自由国民社 2009)に言葉の解説と、特集「ゲリラ豪雨はどうして発生するの?」あり。
- ■ゲリラ豪雨が発生する原因である「積乱雲」について知りたいとのことなので『雲の不思議がわかる本』(森田正光著 誠文堂新光社 2009)を提供。
- ■ゲリラ豪雨の被害状況が知りたいとのことなので、新聞記事データベースで検索。全国の事例は朝日新聞の「聞蔵」、県内の事例は山梨日日新聞の「山日News」で検索し、記事本文を縮刷版や原紙で確認してもらう。
参考資料
- ◆『現代用語の基礎知識学習版』2009(自由国民社 2009)
- ◆『子どものニュースウイークリー』2009年版(中央公論新社 2009)
- ◆『親子で読みたいお天気のはなし』(下山紀夫他著 東京堂出版 2009)
- ◆『ぼくもわたしも気象予報士 5 森田正光の気象災害、異常気象について学ぼう』(森田正光監修 学研 2006)
- ◆『雲の不思議がわかる本』(森田正光著 誠文堂新光社 2009)
調査にあたって
今回のような時事用語は、書名を調べてみても、関係する棚を見ても資料が見つからない場合が多いが、上記のようにいろいろな方法で調べることができる。あきらめずに図書館職員にあれこれ質問し、必要な資料や情報を手に入れてほしい。
作成日:2010年1月6日
じゃんけんあそびはいつ頃から日本で行われているのか。(小学5年)
回答
中国には、古くから手のひらと指を使う、「けん」という遊びがあった。じゃんけんもそのひとつである。「けん」が日本に伝わってきたのは、奈良時代(710~794年)の頃だといわれ、その当時は大人の遊びだった。「けん」が一般に行われるようになったのは、江戸時代(1600~1867年)の中頃で、長崎にいた中国人が行っていたものを日本人がまねをし、流行るようになった。じゃんけんあそびは、世界のいろいろな国にある。
キーワード
■ジャンケン■拳戯(けんぎ)■遊び
調査過程
- ■こども室の参考書棚を見る。
- ■『総合百科事典ポプラディア』第5巻(ポプラ社 2002)では「ジャンケン」のあそび方の説明のみ。
- ■書名に「ジャンケン」を入れて検索する。
- ■『あそびのずかん』2(竹井史郎作 辻幸子絵 あかね書房 1993)『世界のじゃんけん』(田中ひろし著 こどもくらぶ編 今人舎 2002)『ジャンケンで遊ぼう』(小菅知三著 明治図書出版 1985)に掲載あり。また、一般資料の『じゃん・けん・ぽん』(赤穂敞也著 近代文芸社 1995)『伝承遊び考』4(加古里子著 小峰書店 2008)には詳しい説明あり
- ■書名に「もののはじまり」を入れて検索する。
- ■『もののはじまりシリーズ』10(高野澄文 ゆーちみえこ絵 ポプラ社 1990)に詳しく掲載あり。
- ■インターネットで検索する。
- ■「世界のじゃんけん/世界のジャンケン」(http://www.netlaputa.ne.jp/~tokyo3/janken.html)に詳しい説明あり。
参考資料
- ◆『あそびのずかん』2(竹井史郎作 辻幸子絵 あかね書房 1993)
- ◆『世界のじゃんけん』(田中ひろし著 こどもくらぶ編 今人舎 2002)
- ◆『ジャンケンで遊ぼう』(小菅知三著 明治図書出版 1985)
- ◆『じゃん・けん・ぽん』(赤穂敞也著 近代文芸社 1995)
- ◆『伝承遊び考』4(加古里子著 小峰書店 2008)
- ◆『もののはじまりシリーズ』10(高野澄文 ゆーちみえこ絵 ポプラ社 1990)
調査にあたって
ジャンケンについて書かれた図書『世界のじゃんけん』(田中ひろし著 こどもくらぶ編 今人舎 2002)やインターネット情報「世界のじゃんけん/世界のジャンケン」(http://www.netlaputa.ne.jp/~tokyo3/janken.html)は、世界のジャンケンを紹介しているので総合学習として調べてみるとおもしろい。また、一般図書『じゃん・けん・ぽん』(赤穂敞也著 近代文芸社 1995)『伝承遊び考』4(加古里子著 小峰書店 2008)では、地域や時代によって違う様々なジャンケンについて詳しく書かれているので、小学生には少々難しいが参考にしてみると良い。その他、ジャンケンの歴史等、ものの起源を知りたいときには、『もののはじまりシリーズ』全10巻(ポプラ社 1990)がとてもわかりやすく書かれているので役に立つ。
作成日:2008年10月30日
マラソンの距離はどうして42.195kmなのか。(小学5年)
回答
紀元前490年、ギリシャとペルシャの間で、マラトン(Marathon=英語読みでマラソン)の戦いが起こり、勝ったギリシャ兵が、その知らせを約40㎞離れたアテネまで走って知らせた。この言い伝えにちなんでオリンピックの第1回アテネ大会(1896年)で、マラトンからアテネ競技場までのコース(約40㎞)で長距離ロードレース=マラソンが行われた。大会主催者によって、距離がまちまちであったが、第8回パリ大会(1924年)から42.195㎞に統一された。この距離は第4回ロンドン大会(1908年)での、ウィンザー城から競技場ゴール、26マイル385ヤード=42.195㎞である。
キーワード
■マラソン■オリンピック■マラトン
調査過程
- ■こども室の参考書棚を見る。
- ■『集英社まんがこども大百科』(集英社 2000)『きっずジャポニカ』(小学館 2006)では「マラソン」の説明のみ。
- ■『総合百科事典ポプラディア』第9巻(ポプラ社 2002)には距離に関する説明あり。
- ■書名にマラソンを入れて検索する。
- ■『もののはじまりシリーズ』10(高野澄文 ゆーちみえこ絵 ポプラ社 1990)『マラソンを走る・見る・学ぶQ&A100』(山地啓司著 大修館書店 2007)に掲載あり。
- ■書名にオリンピックを入れて検索する。
- ■『オリンピックおもしろ大百科』(日之出出版 1999)『オリンピックがよくわかる』2(ハイドン・ミドルトン著 鈴木出版 2000)に掲載あり。
- ■インターネットで検索する。
- ■「語源由来辞典」(http://gogen-allguide.com/)の「マラソン」の項目に詳しい説明あり。
参考資料
- ◆『総合百科事典ポプラディア』第9巻(ポプラ社 2002)
- ◆『もののはじまりシリーズ』10(高野澄文 ゆーちみえこ絵 ポプラ社 1990)
- ◆『マラソンを走る・見る・学ぶQ&A100』(山地啓司著 大修館書店 2007)
- ◆『オリンピックおもしろ大百科』(日之出出版 1999)
- ◆『オリンピックがよくわかる』2(ハイドン・ミドルトン著 鈴木出版 2000)
調査にあたって
『総合百科事典ポプラディア』は小学生の調べ学習資料としてとても使いやすい。しかし、内容がもっと詳しい図書を探して紹介した。やはり、事典では概略だけになってしまうので、詳しく載っている資料を紹介することで、調べ学習のやり方を学んでほしいと思う。
作成日:2008年5月30日
皆の前で手品をしたい。皆も一緒にできて簡単な手品の本があるか。 (小学5年)
回答
大勢で参加する手品ということで、『折り紙手品』(桃谷好英著 誠文堂新光社 1987)、『教室で楽しむ!手品ベスト50』(勝田房治著 草土文化 1996)などを紹介。
キーワード
■手品
調査過程
- ■手品の本はたくさんあるが、皆も参加できる手品であることと、簡単であることが条件なので、おりがみなどで手品を紹介したものについて調べると、『折り紙手品』(桃谷好英著 誠文堂新光社 1987)、『かならずできる手品』(ひかりのくに 1997)などがある。
- ■身近な物(トランプ・コイン・ひも)で手品をする『かんたんコインとお札の手品』(トランプマン作 佐藤まもる絵 岩崎書店 1998)、『かんたんトランプの手品』(トランプマン作 佐藤まもる絵 岩崎書店 1998)、『かんたんひもとハンカチの手品』(トランプマン作 佐藤まもる絵 岩崎書店 1998)なども紹介する。
- ■『教室で楽しむ!手品ベスト50』(勝田房治著 草土文化 1996)が皆で楽しめるものと判断し紹介する。
- ■他には『ひかりのてじな』(村田道紀文・絵 関戸勇写真 偕成社 1988)、『コップのてじな』(七尾純構成・文 くもん出版 1983)等も紹介する。
参考資料
- ◆『折り紙手品』(桃谷好英著 誠文堂新光社 1987)
- ◆『教室で楽しむ!手品ベスト50』(勝田房治著 草土文化 1996)
- ◆『折り紙手品』(桃谷好英著 誠文堂新光社 1987)
- ◆『かんたんコインとお札の手品』(トランプマン作 佐藤まもる絵 岩崎書店 1998)
- ◆『コップのてじな』(七尾純構成・文 くもん出版 1983)など
調査にあたって
小学校5年生なので少し高度の手品で良いのかと思い数冊紹介したところ、皆で楽しみたいとのことなので、見る手品でなく参加型の手品の本を紹介した。
作成日:2000年3月31日
流星とはなにか。星が落ちてくるとどうなるのか。(小学1年)
回答
流星は彗星という星からやってくる。彗星も太陽の周りをまわっているが、ほかの惑星と同じではなく、氷のかたまりと「ちり」がまじりあったもので、宇宙を移動しながら後に「ちり」のもやを残していく。私たちが目にする流星は、この「ちり」が地球の大気の中を落ちて行くところである。流星は彗星が後に残していったものなのである。地球が出会う星のなかには、大きくて大気の中を落ちていく時に燃え尽きないものが時々あり、燃え残ったものが地上に落ちてきて、隕石となる。隕石は、石と鉄でできているものがほとんどである。隕石は、彗星からやって来たのではなく、流星とは全く違うものである。大きな隕石がクレーターという巨大な穴をあけることがある。アメリカのアリゾナ州にある、幅1キロメートル以上もあるクレーターもそのひとつである。もしもこのような隕石が、地球上の人がたくさん住んでいる場所に落ちたら、大変な被害が出るだろうが、このクレーターというのはとても大昔のものなので、そのようなことは起きそうにもない。
キーワード
■流星■彗星■隕石■星
調査過程
- ■『すい星と流れ星』(パトリック・ムーア文 江川多喜雄監訳 ほるぷ出版 1996)で流れ星はなぜ出来るかを説明したが、星が理解できていないので、さらに『星がうまれる』(塚本治弘文 草土文化 1989)、『夜は、なぜあるの?』(佐治晴夫文 成瀬政博絵 日本書籍 1991)『宇宙は、どこから来たの?』(佐治晴夫文 成瀬政博絵 日本書籍 1991)等を紹介。
- ■「星が落ちる」ということは、どうやら隕石のことを質問しているようなので、隕石が写真や絵でわかりやすく書かれている『流れ星・隕石』(藤井旭著 あかね書房 1988)を見てもらう。
参考資料
- ◆『すい星と流れ星』(パトリック・ムーア文 江川多喜雄監訳 ほるぷ出版 1996)
- ◆『流れ星・隕石』(藤井旭著 あかね書房 1988)
調査にあたって
もう少し高学年であれば、『ふしぎ!なぜ?大図鑑 宇宙編』(主婦と生活社 1992)をまず紹介し、それからそれぞれの星に関する本を紹介したいところだが、一年生ということなので、絵や写真などが多く、あいまいな言い回しをさけ、簡潔に書かれているものを提示した。
作成日:2000年3月31日
ルパン全集の最後の5巻は原作者の死後書かれたものだそうだが、誰が書いたのか。また、その作家について知りたい。(中学2年)
回答
『怪盗ルパン全集』全30巻(モーリス・ルブラン著 南洋一郎訳 ポプラ社 1980)の26卷~30卷は、モーリス・ルブランのメモをもとにピエール・ボアローとトーマ・ナルスジャック(共同筆名、ボアロー・ナルスジャック、アルセーヌ・ルパン)がまとめた。ピエール・ボアロー(1906~1989)は、フランスのミステリー作家、シナリオライター。1934年推理小説「真夜中の散歩」でデビュー。1938年に「バッカスの休息」で冒険小説大賞を受賞した。トーマ・ナルスジャック(1908~)は、フランスのミステリー作家。本名、ピエール・エロー。高校で哲学と文学の教鞭を執った後、長い間大学教授として哲学を講じながら創作にあたっていたが、やがて教職を退き、執筆活動に専念。1948年「死者は旅行中」で冒険小説大賞受賞。1948年、二人は共作による「悪魔のような女」を発表して一躍有名になり、以後ボアロー・ナルスジャックのペンネームを用いて約40年間、「死者の中から」、「銀のカード」、「すり代わった女」など100以上の推理小説や多数の評論、戯曲を発表。フランス最大のサスペンス作家と評される。
キーワード
■アルセーヌ・ルパン■モーリス・ルブラン■ピエール・ボアロー■トーマ・ナルスジャック
調査過程
- ■「ルパン全集」は何種類か発行されているが、どの全集かを確認すると『怪盗ルパン全集』全30巻(モーリス・ルブラン著 南洋一郎訳 ポプラ社 1980)である。
- ■『怪盗ルパン全集』26巻「悪魔のダイヤ」の、訳者南洋一郎による「はじめに」を見ると「これはアルセーヌ=ルパンの原作」であると記述あり。
- ■『怪盗ルパン全集』27巻の「はじめに」には「......モーリス=ルブランののこしたメモが発見され、それをもとにして有名な新進推理作家が書いたもの......」との記述。28巻の「はじめに」には「フランスの新進推理作家、ボアローとナルスジャックが書いたもの」と記述。29巻の「はじめに」には「悪魔のダイヤ」(『怪盗ルパン全集』26巻)はフランスの推理作家ボアローとナルスジャックが原作者モーリス・ルブランの遺族の了解を得て発表したが、自分たちの名前の公表を望まなかったため、アルセーヌ・ルパン原作とした旨記述。また、30巻の「はじめに」には「モーリス=ルブランのメモをもとにして、ボアローとナルスジャックがまとめた」と記述あり。
- ■『世界作家事典』1巻「ミステリ・冒険・スパイ」(日外アソシエーツ 1998)を調べると「ボアロー=ナルスジャック」の項があり、「共同筆名:Pierre(Prosper) BOILEAUおよびThomas NARCEJAK」とあり。ルパンとの関わりについてはふれていない。
- ■『最新海外作家事典(新訂)』(Gale Research 1994)のボアローとナルスジャックについて調べると経歴等の記載あり。ルパンとの関わりについてはふれていない。
- ■さらに『世界ミステリー作家事典』(森英俊編著 国書刊行会 1998)で「ボアロー&ナルスジャック」の項を見ると、最後の行に「アルセーヌ・ルパン名義で出版された贋作ルパン物にも、パスティーシュの名手としてのナルスジャックの手腕が遺憾なく発揮されている」とあり。また「ボアロー&ナルスジャック(ルパン,アルセーヌ)」の作品リストあり。
参考資料
- ◆『怪盗ルパン全集』27・28・29巻(モーリス・ルブラン著 南洋一郎訳 ポプラ社 1984)
- ◆『世界ミステリー作家事典』(森英俊編著 国書刊行会 1998)
調査にあたって
ルパン全集は何種類か発行されているので、質問者が求めている全集について確認してから調査にあたったが、同じような書名が多く、またピエール・ボアローとトーマ・ナルスジャック二人の共同筆名で書かれており紛らわしかった。調査の段階で、フランス最大のサスペンス作家であり、作品が数々の映画になっていたり、日本にも多く紹介されていることがわかった。
作成日:2000年3月31日
子どもの頃読んだ、田舎のねずみと町のねずみの物語を、英語と日本語で読みたい。また、何を言おうとしているのか知りたい。(母親)
回答
『いなかのねずみととかいのねずみ』(イソップ作 小野ルミ文 金の星社 1986)、『いなかのねずみとまちのねずみ』(アイソポス作 箕浦万里子訳 偕成社 1991)、『町のねずみといなかのねずみ』(ヘレン・クレイグ再話・絵 清水奈緒子訳 セーラ出版 1994)、『まちのねずみといなかのねずみ』(中谷千代子文絵 講談社 1970)がある。また、英語の本では『いなかのねずみとまちのねずみ-The country mouse and the city mouse-』(イソップ原作 アスク 1998)がある。この『いなかのねずみとまちのねずみ』はイソップの寓話のなかでも、最も愛され親しまれている話で、ねずみの持つ愛嬌のあるイメージを通して、野ねずみと家ねずみを対比させ、鋭く人生をかいまみせている。
キーワード
■「いなかのねずみとまちのねずみ」■イソップ■童話
調査過程
- ■自館システムで「イナカノネズミ」を書名検索すると『いなかのねずみととかいのねずみ』(イソップ作 小野ルミ文 金の星社 1986)、『いなかのねずみとまちのねずみ』(アイソポス作 箕浦万里子訳 偕成社 1991)、英語の本では『いなかのねずみとまちのねずみ-The country mouse and the city mouse-』(イソップ原作 アスク 1998)がある。
- ■原作がイソップなので、自館システムで「イソップ」を辞書(人名)検索すると、イソップ寓話集がたくさんでてくる。その中で利用者の求めているものと思われる『町のねずみといなかのねずみ』(ヘレン・クレイグ再話・絵 清水奈緒子訳 セーラ出版 1994)、『まちのねずみといなかのねずみ』(中谷千代子文・絵 講談社 1970)も併せて紹介する。
- ■ 内容については、作家イソップについて調べた方が良いと判断し、『児童文学事典』(日本児童文学学会編 東京書籍 1988)、『世界児童文学案内』(神宮輝夫著 理論社 1980)、『伝記人物事典』世界編(西山敏夫ほか共著 保育社 1978)を調べる。
参考資料
- ◆『いなかのねずみととかいのねずみ』(イソップ作 小野ルミ文 金の星社 1986)
- ◆『いなかのねずみとまちのねずみ』(アイソポス作 箕浦万里子訳 偕成社 1991)
- ◆『町のねずみといなかのねずみ』(ヘレン・クレイグ再話・絵 清水奈緒子訳 セーラ出版 1994)
- ◆『まちのねずみといなかのねずみ』(中谷千代子文絵 講談社 1970)
- ◆ 『いなかのねずみとまちのねずみ-The country mouse and the city mouse-』(イソップ原作 アスク 1998)
調査にあたって
イソップについては、あまりにも有名なことと、短い寓話が多いことは知られていても、不確かなことが多い。動物寓話が中心で、その素材は神・人間・植物・無生物にも及んでいる。多くが単純明快な論理で貫かれ、寓意は明白、人物たちも鮮やかで、着想の面白さを伴いつつ、生活上のモラルを説いている。「イソップ寓話集」はイソップの語った寓話のみで成立しているのではない。むしろ別人の作であった寓話を次々と吸収しつつ集成に向かったものと思われる。版によって異なるが、現在の収録数は約400編といわれ、我が国での最初の移入は、1593年、天草の耶蘇会学林からでたローマ字本『イソポのハプラス』である。もともと大人のための短い寓話であったようだが、現在は子ども向けに書かれている。動物・植物・自然に目を向けることにより底に流れている真意を読みとってほしい。
作成日:2000年3月31日
こうもりが都合の良い時は鳥だと言い、都合が悪くなったら自分はけものだからと言ってその場をうまくかわす話は何の話か、また、その趣旨を知りたい。(一般)
回答
『イソップ寓話集』2の「コウモリとイタチ」、『イソップ絵物語』の「こうもり」、『きょうのおはなしなあに』秋の「ひきょうなこうもり」等、訳者により題名に多少の違いはある。こうもりが状況に応じて鳥だと言ったり、けものだと言ったりして、結局どちらへも入れてもらえなかったというたとえと、状況の変化に合わせてそれにかなうようにする人たちは、危地を脱することができることもあるので、いつもおなじやり方にこだわってはいけない、という二つの解釈がある。
キーワード
■寓話■イソップ■こうもり
調査過程
- ■自館システムで「コウモリ」を単語検索し、本にあたると、『きょうのおはなしなあに』秋(ひかりのくに 1997)『小学館世界の名作』18(小学館 1999)等にあった。
- ■イソップの寓話であることが分かったので、当館所蔵のイソップ物語を検索し、本にあたってみると、『イソップ寓話集』2(イソップ著 小学館 1982)『イソップ』1(川端康成文 フレーベル館 1968)の中にこうもりについての寓話が出ており、その解釈も記載されている。
- ■イソップについては『児童文学事典』(日本児童文学学会編 東京書籍 1988)『オックスフォード世界児童文学百科』(ハンフリー・カーペンター,マリ・プリチャード共著 原書房 1999)『世界児童・青少年文学情報大事典』1(藤野幸雄編訳 勉誠出版 2000)に詳しく記載あり。
参考資料
- ◆『きょうのおはなしなあに』秋(ひかりのくに 1997)
- ◆『小学館世界の名作』18(小学館 1999)
- ◆『イソップ寓話集』2(イソップ著 小学館 1982)
- ◆『イソップ』1(川端康成文 フレーベル館 1968)
調査にあたって
イソップについての人物情報は諸説ある。紀元前620年にトレース(現在のギリシャとトルコの間で分割された地域)に生まれ、紀元前560年にギリシャのデルポイにて死去。サモスのイアドモンの奴隷だったが、主人により自由の身とされて、ギリシャ各地で物語を語り、リデイア王クロイソスの外交官となったという。『世界児童・青少年文学情報大事典』にはこう記されているが、実際には実在したかどうかも定かではない。また、実際は別の作者が作った話をイソップの作であるとする習慣ができあがった(『オックスフォード世界児童文学百科』等)という説までありとても興味深い。
作成日:2000年3月31日
ヘビのしっぽはどこからどこまでか。(小学2年生)
回答
総排泄孔(肛門)から後ろが尾。頭や背中のうろこは細かく、お腹側のうろこは太くて横に長い。総排泄孔から後ろのしっぽは細長い帯状のうろこに変わっており、裏返してみると分かる。
キーワード
■ヘビ■爬虫類■しっぽ
調査過程
- ■『世界大百科事典』25(平凡社 1988)の「ヘビ」の項を見ると、尾は全長の6分の1から4分の1、長いものは3分の1、短いもので10分の1を占めるとある。
- ■『動物たちの不思議な世界シリーズ』10 「ヘビ」(文理 1978)にはヘビの生態から人間との関わりまで記載されているが、どこからが尾かということは書かれていない。
- ■『いきもの探検大図鑑』(小学館 1997)を見ると絵で説明があり、総排出口から先を尾という表記がある。また『爬虫・両生類』(学研 1988)には、ヘビの尾はオスの方がメスより長く、つけ根が太いと書かれている。
- ■『ヘビ大図鑑』(クリス・マティソン著 緑書房 2000)を見ると、背面と側面、腹面、頭部、尾の下面のそれぞれに異なる種類のうろこを持つ、とある。腹面にあるのは腹板と呼ばれるうろこで、あごから総排泄孔までにあるとのこと。
- ■こどもが出す質問ということから『全国こども電話相談室』1(小学館 1997)を見てみると、「ヘビは、どこからしっぽなんですか?」という質問と、その回答が載っていた。
参考資料
- ◆『ヘビ大図鑑』(クリス・マティソン著 緑書房 2000)
- ◆『全国こども電話相談室』1(小学館 1997)
調査にあたって
今年はヘビ年ということでヘビに関する本のコーナを設置したが、知っているようで知らないヘビのしっぽについての質問に、思いのほか図書が少ないことを改めて知らされた。何冊か手に取っていくうちに、気味悪がっていた子どもも、いろいろな種類のヘビやトカゲ、さらには恐竜にまで興味を持つようになった。
作成日:2001年2月14日
ノーベル賞はだれがきめるのか。(小学4年生)
回答
ノーベルの遺言により各受賞者〔経済学賞を除く〕を選ぶところが決められている。物理学賞、化学賞、経済学賞・・・・・・王立科学アカデミー。生理学、医学賞・・・・・・カロリンスカ研究所。文学賞・・・・・・スウェーデン・アカデミー。平和賞・・・・・・ノルウェー国会ノーベル委員会。科学系の場合は、ノルウェーのノーベル委員会から世界各国の専門家、過去の受賞者、大学教授らに推薦依頼状を送り、集まった約300の推薦の中にノーベル委員会独 自の候補を追加して最終候補リストを作成、この中から段階的に減らしていく。部門によって若干選考方法、選考メンバー、選考手続きに違いがある。自分で自分を推薦することは出来ず、依頼を受けた人が極秘に推薦する。推薦の締め切りは毎年それぞれの選考委員会に1月31日必着となっている。これを8ヶ月余かけて選考し、10月に入って順次発表、半ばには出揃う。ノーベル賞選考は、極秘に慎重に進められ、選考過程の記録・資料、候補にのぼった名前等は50年間の守秘義務があり公表されない。また50年後も自由閲覧は認められていない。
キーワード
■ノーベル賞■ノーベル,アルフレド・ベルンハルド
調査過程
- ■自館システムで「ノ-ベルシヨウ」で書名検索すると『ノーベル賞の人びと』1~3(ネイサン・アーセング著 大日本図書 1991)があり、3巻の前書きを見ると、ノーベル平和賞の受賞者だけは他のノーベル賞とは異なり、 ノルウェーのノーベル委員会によって選考され、授賞式もノルウェーのオスロで、毎年12月10日(ノーベルの命日)に行われる。ほかの賞はスウェーデンで決められ、授賞式はストックホルムで行われるとある。しかし賞の選定方法などにはふれていない。
- ■『ノーベル賞名鑑』2000年度新装版(溝川徳二編 名鑑社 1999)にノーベル賞のテーマ別解説があり、賞金、 受賞者の人数制限やアルフレド・ノーベルについて詳しく解説あり。
- ■伝記の『ノーベル』(近藤釧三著 ポプラ社 1978)にノーベル賞についての項があり、経済学賞をのぞく5つの賞をどこで選考するかをノーベルが遺言している、という記載があった。
- ■『大日本百科事典』14(小学館 1977)「ノーベル賞」の項に選考方法の詳しい記載がある。
参考資料
- ◆『大日本百科事典』14(小学館 1977)
- ◆『ノーベル』(近藤釧三著 ポプラ社 1978)
- ◆『ノーベル賞の人びと』3(ネイサン・アーセング著 大日本図書 1991)
調査にあたって
昨年日本でも白川博士が受賞したことで興味と関心を示す小学生が多く、このような質問も多くだされた。 伝記なども賞について少しふれていたが、一般向けの『ノー ベル賞名鑑』などは詳しく、小学校高学年くらいならば十分活用できると思う。
作成日:2000年3月31日
リサイクルの勉強をしている。「ごみ」を使ってグループで何か作りたいのだが、参考資料を見せてほしい。(中学生 調べ学習)
回答
1995年6月に「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」という法律がつくられた。家庭からでるゴミの6割は、ペットポトルやびん、缶、紙などの容器や包装紙で、それをまた利用できるようにすることをリサイクルという。「ごみ」をリサイクルする工作を扱った図書としては『最新リサイクル工作図鑑』黒須和清著 東京書籍 1998)『牛乳パックのはたらくのりもの』(石崎友紀著 いんなあとりっぷ社 1991)『リサイクル自由研究』(栄光,こどもくらぶ編集部編 双葉社 1998)『空き芯リサイクル工作』(ブティック社 2000)『環境とリサイクル』全12巻(本間正樹文 小峰書店 1994)などたくさんある。 一般書でも『空き容器のリサイクル雑貨』(日本ヴォーグ社 1999)等は中学生でも十分活用できる。
キーワード
■リサイクル■ごみ■工作
調査過程
- ■『ユニボス21』'96(文渓堂 1995)で「リサイクル」の項を見ると、ゴミとリサイクルの項に詳しく記載あり。
- ■自館システムで「リサイクル」を単語検索する。ヒットしたものをみると、子ども向けの資料もたくさんあるが、中学生なので一般書でも十分利用できることがわかり、こちらも提供することにする。
- ■分類記号750・375・518の書架にあたると、ここにも多数の資料がある。
参考資料
- ◆『最新リサイクル工作図鑑』黒須和清著 東京書籍 1998)
- ◆『牛乳パックのはたらくのりもの』(石崎友紀著 いんなあとりっぷ社 1991)
- ◆リサイクル自由研究』(栄光,こどもくらぶ編集部編 双葉社 1998)
- ◆『空き芯リサイクル工作』(ブティック社 2000)
- ◆『空き容器のリサイクル雑貨』(日本ヴォーグ社 1999)
調査にあたって
リサイクルを学ぶことによって、環境問題に目を向け、身近なことから考えてほしいと思う。グループ学習なので、資料をたくさん提供した。男子・女子では作りたい物がだいぶ違ったが、いろいろな物に挑戦するという。 思わぬ物が形を変えることによって全く違った物になることに中学生も感動したようだ。調べ学習のために図書館を訪れる児童・生徒が増えてきた。「調べ学習のための」というシリーズものが最近数多く出版されており、当館でも所蔵しているが、こういった図書はあくまでも入り口として、もっと多くのことを学んでほしいと思う。
作成日:2000年3月31日
果物の汁ではあぶりだしができるのに、塩水や砂糖水ではどうしてできないのか。(小学2年生)
回答
果物や野菜の汁で紙に文字や絵を書いてをあぶると、汁の中の水は蒸発してなくなるが、汁に溶けていたものは紙にのこり、熱でこげて黒くなる。あぶりだしは、塩水や砂糖水でもできる。できなかったのは、薄かったためではないだろうか。
キーワード
■あぶりだし
調査過程
- ■『学芸百科事典』1巻(旺文社 1973)で「あぶりだし」の項を見ると、解説があるが、小学2年生には難しすぎる。
- ■『小学館全教科学習大百科事典』11巻「自然と理科の事典」(小学館 1980)で「あぶりだし」の項を見ると、あぶりだしができるのは「しみこんだ液が熱せられて紙のせんいを分解し、物がこげたときのように炭素がのこるからである」と記載あり。
- ■『学習総合百科事典』新訂4巻「理科Ⅱ」(講談社 1981)の索引で「あぶりだし」を引き、第6章「水溶液と結しょう」の「あぶりだし」の部分を見ると、「しるでかいたものをあぶると、しるの中の水はじょうはつ(かわくこと)して、なくなりますが、しるにとけていたものは紙にのこります」などの記載あり。
- ■自館システムで「アブリダシ」を辞書(件名)検索と単語検索するが、ヒットせず。
- ■『どの本で調べるか 小学生版』増補改訂1巻(リブリオ出版 1997)で「あぶりだし」を見ると、『小学なぜなぜふしぎサイエンス』16「火や水のふしぎ」(学研絵とき科学シリーズ)、『理科の実験』(小学館の学習百科図鑑)が参考文献としてあげられている。自館システムで検索するが、両方とも所蔵なし。
- ■「NDC407 研究法.指導法.科学教育」の書架にあたる。『小学生のための理科の自由研究 ヒント集 小学1.2.3.年』(誠文堂新光社 1989)に「テーマ22 あぶり出しの研究」の項があり、食塩水やさとう水でもあぶりだしができるようですが、うすいえきと、こいえきとでは、どちらがあぶり出しができやすいでしょうか」などの記載があり。
- ■『世界大百科事典』1巻(平凡社 1988)で「あぶりだし」の項を見ると、「簡単な方法としては、ミカン汁や塩水を使う場合もある」と記載あり。
参考資料
- ◆『小学生のための理科の自由研究 ヒント集 小学1.2.3.年』(誠文堂新光社 1989)
- ◆『小学館全教科学習大百科事典』11巻「自然と理科の事典」(小学館 1980)
- ◆『学習総合百科事典』新訂4巻「理科Ⅱ」(講談社 1981)
- ◆世界大百科事典』1巻(平凡社 1988)
調査にあたって
最初に引いた百科事典の説明には、「脱水分解」などという難しい用語を使用しており、小学生にあぶりだしの仕組みを説明するのは難しいかと思ったが、調べていくと、子どもにもわかりやすい言葉で説明されているものがあった。塩水や砂糖水でもあぶりだしは可能だが、依頼者はできなかったらしい。おそらく濃度が低かったためであろう。
作成日:2000年3月31日
ボーイスカウト世界ジャンボリーの今までの開催国を知りたい。(小学4年生)
回答
世界ジャンボリーは、4年ごとに開催されるスカウトたちのための国際大会で、加盟国連盟の加盟員、少年少女は14~18歳の年齢の者が参加できる。第1回大会(1920年)、イギリス。第2回(1924年)、デンマーク。第3回(1929年)、イギリス。第4回(1933年)、ハンガリー。第5回(1937年)、オランダ。第6回(1947年)、フランス。第7回(1951年)、オーストリア。第8回(1955年)、カナダ。第9回(1957年)、イギリス。第10回(1959年)、フィリピン。第11回(1963年)、ギリシャ。第12回(1967年)、アメリカ。第13回(1971年)、日本。第14回(1975年)、ノルウェー。第15回(1983年)、カナダ。第16回(1988年)、オーストラリア、第17回(1991年)、韓国。第18回(1995年)、オランダ。第19回(1998)年、チリ。
キーワード
■ボーイスカウト■世界ジャンボリー
調査過程
- ■『学習百科事典』16巻(旺文社 1975)で「ボーイスカウト」の項を見ると、世界ジャンボリーについては「4年ごとに世界ジャンボリーを開催している」とのみ記載あり。
- ■自館システムで「ボ-イスカウト」を辞書(件名)検索する。ヒットしたものをみると、子ども向けの資料はない。『少年団運動の成立と展開』(田中治彦著 九州大学出版会 1999)巻末の「少年団・ボーイスカウト年表」などをみるが、昭和20年代まで。
- ■インターネットの検索エンジン「goo」(http://www.goo.ne.jp/)で「ボーイスカウトジャンボリー 開催国」のキーワードで検索すると、「我が家のスカウト活動」(http://www.biwa.ne.jp/~kobataka/scout/index.htm)の「ボーイスカウト世界ジャンボリー」がヒット。過去の世界ジャンボリーの、回数・開催年月・開催国(場所)・参加人数・参加国数・日本 からの参加数が一覧表になっている。公式サイトではない。
- ■公式サイトでは「(財)ボーイスカウト日本連盟」(http://www.scout.or.jp/)がヒットしたので、この中の「世界ボーイスカウト運動の歩み」を確認する。
参考資料
- ◆『世界のボーイスカウト運動』(ボーイスカウト日本連盟 1993)
調査にあたって
学校の教科の範囲内のことに関しては色々な図書資料があるが、それ以外のことがらについて調べるとなると、児童向けの資料では対応できないことが多く、親と同伴で来て大人向けの資料を説明してもらいながらレポートを書く子どもも多い。今回の調査でも、お母さんの方が熱心だったので、こちらもつい、子どもとではなくお母さんと話してしまった。
この後、「(財)ボーイスカウト日本連盟」のホームページで紹介されていた『世界のボーイスカウト運動』(ボーイスカウト日本連盟 1993)を購入した。この本には、第1回から17回大会までの記載がある。
作成日:2000年2月16日
「クマのプーさん」が、日本に初めて紹介されたのはいつか。(一般)
回答
Winnie-the-Pooh"の初訳は、1940(昭和15)年12月、石井桃子訳の『熊のプーさん』で、岩波書店から出された。所蔵先、現物は未確認。
キーワード
■「クマのプーさん」■アラン・アレクサンダー・ミルン■石井桃子
調査過程
- ■『オックスフォード世界児童文学百科』(ハンフリー・カーペンター,マリ・プリチャード共著 神宮輝男監訳 原書房 1999)で「クマのプーさん」の項を見ると、1926年の作品であることがわかる。
- ■『英米児童文学年表/翻訳年表』(清水真砂子,八木田宜子共編 研究社 1972)で「英米文学年表」の「1926年」の項を見ると「Milne,A.A.:Winnie-the-Pooh → 昭15」とあり、「翻訳年表」の「昭和15年」の項を見ると「『熊のプーさん』(ミルン)石井桃子 岩波書店」とある。
- ■自館システム、山梨県図書館情報ネットワークシステムで『熊のプーさん』の所蔵調査をするが、所蔵館なし。
- ■国立国会図書館による総合目録データベースで検索すると、同タイトルでは、1950(昭和25)年英宝社刊のものしかヒットしない。また、『国立国会図書館所蔵児童図書目録』(国立国会図書館 1951)、『新編帝国図書館和古書目録』(東京堂出 1985)などの冊子目録を見るが、所蔵なし。"
参考資料
- ◆『英米児童文学年表/翻訳年表』(清水真砂子,八木田宜子共編 研究社 1972)
調査にあたって
「クマのプーさん」の初訳が、戦前であることがわかり驚いた。「プーと私」(『石井桃子集』7巻(岩波書店 1999)所収)によると、石井桃子さんは、1933(昭和8)年のクリスマス・イブに作家・犬養健氏の家で「プー横町にたった家」の原書"The House at Pooh Corner"と出会い、まだ幼かった犬養道子さん・康彦さんに訳し読みきかせた。その後まもなく銀座の教文館で"Winnie-the-Pooh"を見つけ、訳しはじめる。戦争中は、敵性国家のものとして紙の配給を受けられず、絶版になった。初版については、岩波書店の原本も紛失しているとのことである。また当時は、石井桃子訳の他に、『小熊のプー公』(松本恵子訳 新潮社 1941)というものもあった。『英米児童文学年表/翻訳年表』は、「英米児童文学年表」と、1868(明治元)年から1969(昭和44)年までの「翻訳年表」を、対照できるよう見開きで収載したもの。「英米児童文学年表」には文学賞の受賞や日本語訳タイトルなどが記載。また、「翻訳年表」は「英米児童文学年表」に挙げられている作品の日本語訳初訳本を中心に、英米以外の国々の作品の翻訳も収録されている。
作成日:2000年3月31日
「最後の授業」の歴史的な背景を知りたい。(一般)
回答
「最後の授業」は、普仏戦争の結果、プロシアに割譲されたアルザスのある村を舞台にした作品。ドイツとフランスの国境近くにあるアルザス地方は、ドイツ領になったりフランス領になったりという歴史があり、当時アルザス人はドイツ語の方言を話していた。『アルザスの言語戦争』(ウージェーヌ・フィリップス著 宇京頼三訳 白水社 1994)、『ことばと国家』(田中克彦著 岩波書店 1981)、『消えた「最後の授業」』(府川源一郎著 大修館書店 1992)に、詳しい解説がある。
キーワード
■「最後の授業」■「月曜物語」■アルフォンス・ドーデ■フランス語
調査過程
- ■「最後の授業」はアルフォンス・ドーデの短編集『月曜物語』の冒頭の作品。依頼者側ではすでに『月曜物語』(アルフォンス・ドーデー作 桜田佐訳 偕成社 1979)の解説は読んでおり、普仏戦争(1870~1871)時代の物語であることなどは知っているとのこと。『月曜物語』の解説を確認する。
- ■『フランス文学辞典』(日本フランス語フランス文学会編 白水社 1974)の「月曜物語」、「最後の授業」の項を見ると、物語の概要などの記載あり。
- ■自館システムで「フフツセンソウ」を辞書(件名)検索するが、参考となるような資料は所蔵していない。『世界歴史大事典』17巻(教育出版センター 1986)で「普仏戦争」の項を見るが、参考となる記述はなし。
- ■「NDC235 フランス史」の書架に行き、直接資料にあたる。『アルザスの言語戦争』(ウージェーヌ・フィリップス著 宇京頼三訳 白水社 1994)を見て、内容を確認すると、アルザス地方はドイツ語圏で、使われていたのはドイツ語方言であり、公用ドイツ語である標準ドイツ語ではなかったことなどがわかる。
- ■「NDC293.5 フランスの地理.地誌.紀行」の書架に行き、『ワインと書物でフランスめぐり』(福田育弘著 国書刊行会 1997)を見ると、「フランスとドイツのはざまで」の章に「ドーデの「最後の授業」の虚構と現実」の項があり、アルザス地方の人人はドイツ語方言であるアルザス語を母語としており、フランス語は「非母語」で、この物語は「母国語への愛」を歌った物語ではないことなどが記載されている。また、参考資料として『ことばと国家』(田中克彦著 岩波書店 1981)が紹介されている。
- ■『ことばと国家』を自館システムで検索すると、所蔵しており内容を確認。
- ■また、「NDC375.8 国語科.国語教育」の書架には、『消えた「最後の授業」』があり。
参考資料
- ◆『月曜物語』(アルフォンス・ドーデー作 桜田佐訳 偕成社 1979)
- ◆『アルザスの言語戦争』(ウージェーヌ・フィリップス著 宇京頼三訳 白水社 1994)
- ◆『ワインと書物でフランスめぐり』(福田育弘著 国書刊行会 1997)
- ◆『ことばと国家』(田中克彦著 岩波書店 1981)
調査にあたって
小学校の国語の教科書にも採用された「最後の授業」は、明日からはもう自分の国の言葉を使えなくなってしまうという日の、「フランス語での最後の授業」の様子を描いた作品。当時、この地方ではドイツ語の方言を話しており、フランス語は使用していなかった。つまり、「最後の授業」の教室で習っていたのは、日常使用している言葉ではなかったようだ。調査の中で、この作品が日本に紹介されたのは、愛国心を高めるのに利用されたのだということがわかり驚いた。システムや参考図書類では検索できず、直接書架にあたったが、予想以上に多くの参考資料があった。
作成日:1999年10月18日
児童雑誌「キンダーブック」の創刊号はどんな内容だったか知りたい。(一般)
回答
「キンダーブック」は1927(昭和2)年11月にフレ-ベル館より創刊された。創刊号(第1輯第1編)は「お米の巻」。B4判32ページ多色刷、定価50銭で、初版は三千部。表紙にはミレーの「落ち穂拾い」を使い、田植えから収穫・精米までの過程と、米を用いた製品などが絵とともに説明されている。
キーワード
■「キンダーブック」■フレーベル館■雑誌
調査過程
- ■自館システムの逐次刊行物名検索で「キンダ-ブツク」を検索するが未ヒット。
- ■『日本児童文学大事典』2巻(大阪国際児童文学館編 大日本図書 1993)で「キンダーブック」を引く。創刊号について説明あり。また、参考文献として『フレーベル館七十年史』(フレ-ベル館 1977)が挙げられている。
- ■自館システムで、『フレーベル館七十年史』を検索するが未ヒット。
- ■児童図書研究コーナーで資料を探す。『幼年絵雑誌の世界』(中村悦子著 高文堂出版社 1989)に第四章「『キンダーブック』の頃」があり、創刊号の表紙の写真、目次の内容などの掲載あり。
参考資料
- ◆『日本児童文学大事典』2巻(大阪国際児童文学館編 大日本図書 1993)
- ◆『幼年絵雑誌の世界』(中村悦子著 高文堂出版社 1989)
調査にあたって
「キンダーブック」は、1926(昭和元)年の幼稚園令に対応した観察絵本として、幼稚園への直接販売方式という形で発行された幼児絵雑誌。芸術的・叙情的な内容だった「コドモノクニ」(当時は東京堂発行)とは対照的といえる。私自身も幼稚園のころ親しんだ雑誌だが、今回の調査ではじめて歴史のある雑誌だと知った。創刊号は、複製版が東京都立日比谷図書館の児童資料室に所蔵されている。『日本児童文学大事典』全3巻は、日本の児童文学研究の基礎資料として最も使用される事典。児童文学の分野で活躍した主要な人物、文芸用語・事件・出版社などの事項、雑誌・同人誌・新聞などの逐次刊行物、明治から昭和に刊行された叢書一覧を収録している。
作成日:2000年3月31日
童謡「たきび」の詩が作られたときのエピソードがあれば知りたい。(一般)
回答
「たきび」の作詞者・巽聖火(岩手県出身)は、この歌を作った昭和5、6年当時から13年間、東京都中野区の功雲寺の近く(現在の中野区上高田四丁目)に家を借りて住んでいた。散歩の途中、中野区上高田三丁目の鈴木さん宅の庭でのたき火を見て、「たきび」のうたの詩情をわかせたと言われている。また、歌詞の中にでてくる「さざんか」は、向かい側の農家の生け垣だったそうだ。
キーワード
■「たきび」■童謡■巽聖火(タツミセイカ)■歌詞
調査過程
- ■『児童文学事典』(日本児童文学学会編 東京書籍 1988)の索引で「たきび」を引くと「巽聖火」の項に解説あり。「戦時下につくられたが、リズミカルな作品で戦後に開花した真に子どもが喜ぶ歌の先駆を成す」などの記述あり。
- ■『児童文学大事典』1巻(大阪国際児童文学館編 大日本図書 1993)で「巽聖火」の項を見ると、経歴や参考文献の記載があるが、エピソードについては記載なし。
- ■『児童文学大事典』にあった参考文献を自館システムで確認すると、「日本児童文学」(日本児童文学者協会)1973年8月号を所蔵している。特集「巽聖火追悼」の記事を見るが該当なし。
- ■童謡についての一般書をあたる。『唱歌・童謡ものがたり』(読売新聞社文化部 岩波書店 1999)の「たきび」の項には、作曲者の渡辺茂さんを取材して書かれたこの歌に関するエピソードの記述があるが、巽聖火は既に没していたため、作詞に関するエピソードについては記載なし。
- ■インターネットの検索エンジン「goo」(http://www.goo.ne.jp/)で「巽聖火 たきび」を検索すると、「中野区ホームページ」(http://www.city.nakano.tokyo.jp/)がヒット。聖火が「たきび」のうたの詩情をわかせたという"童謡「たきび」のうた発祥の地"の紹介あり。
参考資料
調査にあたって
図書資料からは回答が見付けられず、インターネットの検索エンジンを使ったところ、東京都中野区のホームページがヒットした。図書資料による裏付けをとるため、東京都に関する観光や地理、文学散歩などの資料にあたったが、やはり所蔵資料からは見付けられなかった。しかし公式サイトによる情報だったため、これを回答資料とした。「たきび」は小学校で誰もが習うなつかしい歌だが、『唱歌・童謡ものがたり』には、この歌が発表されたのが太平洋戦争開始のときだったため、「たきびは敵機の攻撃目標になる」「落ち葉も貴重な燃料のうちだ」などと軍部からクレームが付き、また戦後も消防署から「街角でのたき火は困る」と言われ、教科書のイラストには水の入ったバケツと付き添いの大人が描かれた、などの思いがけないエピソードも紹介されていた。
作成日:2000年12月8日