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山梨県公共図書館協会会報 第32号

-目次-

新しい図書館のあり方を求めて
山梨県公共図書館協会 会長 齊藤 秀
平成25年度関東地区公共図書館協議会 総会及び研究発表大会報告
大会テーマ「地域の中の図書館」
各部会の活動について
児童奉仕研究部会、地域資料研究部会、読書推進研究部会
平成25年度 県内事情
平成25年度事業報告 事務局だより

新しい図書館のあり方を求めて

山梨県公共図書館協会 会長   齊藤 秀


 今、地域社会は、地方分権、財政困難、少子高齢化等の問題を抱え、人々は、子育て、就業、年金、介護、健康等さまざまな課題に直面しています。このような問題を解決するために図書館は、これまで以上に各地における「地域の知の拠点」として、住民の生涯にわたる自主的な活動を支え、促進する役割を果たすとともに、地域の実情に応じた情報提供サービスなど幅広い観点からの社会貢献への期待に応えていかなければなりません。そのためには、私たち図書館、及び図書館員は、住民や地域の課題、自館の特徴や取組み内容を見つめ直し、地域や利用者に積極的なアピールを展開し、利用者の利便性の向上を図っていかなければなりません。

 過日、「図書館の運営状況に関する評価と情報の提供等について」というアンケートを各市町村立図書館にご依頼いたしました。これは、県立図書館が現在進めている「運営状況に関する評価」の策定の参考にするためのものです。点検・評価は、新たに告示された「図書館の望ましい基準」に、評価が位置づけされたからとするというわけではなく、あくまでも、図書館が運営状況や取り組みの内容を点検し、評価し、さらにはその情報を提供することによって、運営能力やサービスの向上を図っていくために行うものです。県立図書館では、評価を行うために基本的運営方針の共通理解を図るとともに、評価項目・評価指標・外部評価の方法等を検討しているところです。各市町村立図書館の参考になるものとなるよう、できるだけ早急にとりまとめ、実施していきたいと思っています。それぞれの館におかれましても、「評価と情報の提供」につきまして、検討や改善を進めてください。

 ここ数年来、矢継ぎ早に図書館に関する法律の改正や新たなプランが策定されています。全国的なものとしては、「図書館法」の改正、「図書館の望ましい基準」の新たな施行、「第2期教育振興基本計画」の策定等であり、山梨県においては「第2次山梨県子どもの読書活動推進実施計画」の策定、「しなやかな心の育成プロジェクト」における「家読推進運動」の展開、「新やまなしの教育振興プラン」の策定等です。それぞれの時宜にあった改正・施行だとは思いますが、改正・新施行があったからしなければならないということではなく、施策やプランの趣旨は踏まえつつも、しっかりと足下を見つめ、自館の運営方針・運営目標の具現化を目指してほしいと思います。図書館同士、また司書同士の協力、連携、情報交換による横のつながりをさらに密にして、活動していきましょう。

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平成25年度関東地区公共図書館協議会 総会及び研究発表大会報告

大会テーマ「地域の中の図書館」

大会概要

基調講演

パネルディスカッション

研究発表①

研究発表②

講演

大会概要

 平成25年6月20日(木)、6月21日(金)の2日間、関東地区公共図書館協議会、山梨県公共図書館協会、山梨県立図書館の主催により、山梨県立図書館を会場に開催されました。関東甲信越静地区の1都10県の図書館職員の他、一般参加も含め、2日間で208名の方にご参加いただきました。

 今回の研究発表大会では、「地域の中の図書館」をテーマに掲げ、地域の情報拠点として図書館がどのような役割を担っていくべきか、様々な分野の方々から有意義なご意見を伺いました。

 

基調講演 「知的創造と地域の仕事・生活に役立つ図書館に向けて」

〈講師〉
 昭和女子大学特任教授 大串 夏身 氏

 今回の基調講演では、山梨県立図書館の建設構想議論の当初から深く関わってくださった大串夏身氏に、図書館の現状とそこから考えられる地域と図書館の関わり方について、またそれを山梨県の図書館にこれからどう活かしていくべきかという事についてお話をしていただきました。

 はじめに、県立図書館が新施設となり注目されている今、県民から見て「素晴らしい」と思われる施設であることが重要だと述べられました。今後は、「知的な想像に関わる図書館」「県民の生活と仕事に役立つ図書館」「ITCを活用した新しいメディアに取り組む図書館」「触発する図書館」「県の課題に取り組む図書館」「県民がつくる図書館」としての視点が必要だというご意見をいただきました。また駅前という立地を鑑み、館内を賑やかな空間、音が流れ込む空間、静かな空間に分け、利用者が選べる仕組みがよいという考えを示されました。

 次に、世界的に見ても、情報基盤を整備して、いつでもどこでも情報が手に入る仕組みを構築する必要性があり、図書館にも期待が寄せられていると話されました。1995年のブリュッセル情報閣僚会議において、日本とフランスが電子図書館を担当することになったことを紹介され、図書館の新たな役割として推進していく必要があるとの考えを示されました。

 またヤングアダルト向けのサービスが低調であることに触れ、ヤングアダルト世代は読書をしないのではなく、求める本が身近にないことが原因ではないかと述べられました。環境も大切で、友人同士で会話ができる空間を用意し、その中で宿題の相談に応じる等、様々なサービスを展開していく必要があるという考えをお話しいただきました。

 これからの図書館のあり方を考えると、地域の知的創造の場としての役割が重要になってくるのではないかとも述べられました。図書館にある資料や情報を積極的に提供し、それを求める来館者がオープンスペースで交流をはかり、知的創造に繋げるという企画をしていかなければ、一部の利用者のための図書館にとどまってしまう危険があると話されました。日常的に本と人とを結びつける工夫が必要で、本棚でのテーマ展示や表紙を見せる配架などを提案されました。こういった図書館の姿勢は、まちづくりにも生かされていくだろうとの見方も示されました。

 最後に、「知的な創造に関わる」「読書を通じて人を育む」「地域の人々の仕事と生活に役立つ」という3つが、これからの図書館にとって、とても大切だとお話されました。図書館員は、地域の人々に育てていただくという姿勢を忘れず、謙虚に色々なことを学んでいかなければならない、何度も足を運んでもらえる図書館を目指してほしいと締めくくられました。

 

パネルディスカッション 「地域に交流とにぎわいを生み出す図書館の役割」

〈パネリスト〉
 宮川 大輔 氏(春光堂書店)
 山本 育夫 氏(NPO法人つなぐ理事長)
 大串 夏身 氏(昭和女子大学特任教授)
 阿刀田 高 氏(山梨県立図書館長)

〈コーディネーター〉
 日向 良和 氏(都留文科大学情報センター講師)

 パネルディスカッションでは、はじめにコーディネーターの日向氏からパネリストの皆さんをご紹介いただき、「地域に交流とにぎわいを生み出す図書館の役割」をテーマに、パネリストの各立場から様々な意見が交わされました。

 まず最初に、コーディネーターから宮川さんと山本さんに、図書館に対する考え等をお伺いしました。
 宮川さんからは、図書館と書店と観点は異なるが読者層をどう増やしていくかという同じ視点から考え、取り組んでいくことができればよいとのお考えを示されました。山本さんからは、NPO法人の活動を続けている中から、地域を知るための情報は図書館にあると実感しているとお話しいただきました。

 お二人のお話を受けてコーディネーターから、地域に役立つ県立図書館のあり方について阿刀田館長に意見を求めました。
 阿刀田館長は、県の中心図書館として、県民全体に目を配っていくべきだと述べられました。更に読書を楽しむための図書館と実際に生活に役立つ図書館としての二つの役割が必要で、情報も人材も豊かな図書館を作っていくことが県立図書館の立場だろうとのお考えを示されました。

 続いて、県立図書館の設計整備に関わった大串先生からもお話を伺いました。
 大串先生は、図書館とは基本的にオープンスペースを持ち、そこでいろいろな人が集まっていろいろなことが行われるという環境を持っていること、誰でもが入ってきておしゃべりもできるし、知り合いにもなれる、議論もできるという空間があるところではないかとのお考えを述べられました。そして、いろいろな人々が来て、自分たちの居場所を見つけることができるような仕掛けが作られていることが素晴らしいとお話しいただきました。

 次に、コーディネーターから山本さんに、地域という括りの重要性について意見を求めました。
 山本氏は、自らのNPOで手がけているふるさとガイドブックをはじめたときの構想に触れながら、自分たちが生きて生活している場所が歴史的にどんな所なのか、また先人たちは何を残してきたのかを学ぶことが大切であるとお話しいただきました。

 それを受け、日向さんから図書館にはたくさんの郷土資料があり、それを図書館員が再編集して提供していく活動として、図書館の現場でもぜひ参考になるのではと提案がありました。一方で、書店が地域の情報源として果たしてきた役割と、これからの役割について宮川さんに意見を求めました。
 宮川さんは、本と人をどのように結びつけていくのかということが、最終的に書店がやるべき目的であると話されました。これは図書館とも共通するところがあるとも話され、取り組んでいる様々な読書イベントについて紹介いただきました。 図書館員も書店員も、自分のできる範囲の企画をたくさん打ち出していくと、楽しい空間が生まれ、地域の人も集まってくるのではないかと自らの経験を踏まえて話されました。

 宮川氏の話を受けて、コーディネーターから阿刀田館長に、作家という視点も交えて地域の書店が情報源として果たす役割にはどういうものがあるのか問いかけました。
阿刀田館長は、人間は本によって知性を高め創造してきたこと、また、その本の集まる書店はある時期まで町の文化機関であったこと、読書人口を増やしていくことは、図書館の仕事であると同時に、書店の利益にも繋がっていくことであり、本当に情報を得ようと思ったときは「買う」という習慣に導いていくことも大切だとの考えを述べられました。

 最後に、今回のパネルディスカッションの総括として、地域の図書館に求める機能とサービスについてご意見をいただきました。
 宮川さんからは、書店としても読者層を厚くしていきたいという気持ちは同じなので、図書館に書店のいい所を説明してもらい、書店は図書館の使い方を説明していくというような、相乗効果で地域の読書層を延ばしていくことができればとお話しいただきました。また、子どもの読書についても、大人が楽しんで読書をする姿を見せ続けることが大事だといったご意見をいただきました。

 終わりに阿刀田館長から、印刷媒体、IT的な情報も含めて、様々なサービスができる図書館になっていくことが目標とすべき姿であり、充実した県の中心となる図書館として、県民全体に対して目を配っていきたいと締めくくられました。

  

研究発表①「武蔵野プレイスがめざす機能連携とまちの活性化」

〈講師〉
 公益財団法人武蔵野生涯学習推進事業団 武蔵野プレイス事業部館長 三澤 和宏 氏

 三澤和宏氏からは、武蔵野プレイスのコンセプトと運営をする上で掲げているミッションについて、ケーススタディになるようなお話を伺いました。

 武蔵野プレイスは開館時から指定管理者制度を採用し、武蔵野プレイスの中に図書館機能があるという考えのもと、運営されています。交流をコンセプトにして図書館機能を中心に4つの機能を連携させてアクションの連鎖が起きることを目指している施設であるとご紹介いただきました。

 1階には貸出と返却、予約、雑誌・新聞のコーナーがあり、オープンカフェでは貸出前の本も持ち込み可能としているそうです。地下1階のメインライブラリーには、静かに勉強や読書ができるフロア、地下2階には図書のコーナーと青少年のフロアがあります。2階には児童コーナーと、実用書等をテーマ毎に並べたテーマライブラリーがあります。

 建物は吹き抜けになっているため1階の音が2階まで響いてくるが、逆にその音が心地よいという効果があるというお話しがありました。また、小さい部屋が並び、壁と天井が丸みのある一体的な感じに設計されているため、少し隠す事によって覗いてみたくなるブラウジングという効果を狙っていると説明がありました。

 3階に勉強ができるスタディコーナーと、スペースという大小5つの会議室があるそうです。スペースは部屋の中が見えるようにしてあり、お互いに何をやっているかわかる仕掛けにしているそうです。4階のワーキングデスクは有料のため稼働率が悪く、もう少し稼働率を上げたいとお話しがありました。また1階のギャラリーでは展示やコンサートを開催しており、人気のイベントになっているとお話がありました。カフェでは夜にお酒を飲みながら、トークイベント等を定期的に行っているそうです。

 市民活動カウンターでは、情報提供や市民活動に対する色々な相談等を受けたり、多くのフリースペースでは、市民活動のアクションの連鎖を期待しているとのことでした。

 青少年専用の、サウンドスタジオ、クラフトスタジオ、パフォーマンススタジオ等の音楽、調理、工芸、ダンス等ができる部屋もあり、青少年は10分の1の料金設定にしていると説明がありました。

 また武蔵野プレイスは公園との一体的管理をしており、お祭りやマルシェ等、地域の活性化のための大きなひとつのツールになっていると紹介されました。 利用実績としては、平成24年度は150万人を超える来館者と、登録者数は武蔵野市全館で1.37倍に伸びていること、利用者アンケートから今まで図書館に足を運ばなかった方の利用が増えているそうです。

 機能の連携や融合の例として、イベントの際に関連書籍を展示する仕組み作りについてご紹介されました。同時に、どうすれば機能の連携や融合と言えるのかというところが悩ましいという課題にも触れ、ひとつひとつの機能のレベルアップも図らなければいけないと話してくださいました。その中で、今大会の研修を通じ、武蔵野プレイスの4つの機能は全部を含めて図書館と言ってもいいのではないかと考えられたそうです。最後に武蔵野プレイスに来館された際は、ぜひ色々なご意見をいただきたいと締めくくられました。

研究発表② 「"かいぶらり"の地域交流をささえる図書館情報システム」

〈講師〉
 山梨県立図書館資料情報課情報システム担当 土橋 みえ 副主幹

 ふたつめの研究発表では土橋みえ氏から、平成24年11月11日にオープンした山梨県立図書館 "かいぶらり"の図書館情報システムについて具体的な機能を中心にお話しをしていただきました。

 始めに山梨県立図書館の概要として、「開かれた図書館」「人々の交流を生む図書館」というコンセプトと、交流エリアと図書館機能を持つ閲覧エリアに分かれている施設についての説明がありました。入館者数は50万人を約半年間で達成し、旧図書館比で約5.5倍になっているそうです。図書館運営を支える情報システムは、平成20年から構築に取り組み、ほとんどの機能を新しくした事から、その新しい機能について詳しくお話しいただきました。

 まず業務システムでは、ICタグを全ての資料に添付した事で、通常の貸出の他に予約棚から利用者自身が予約資料を探し、自動貸出機で貸出処理が可能となった事に触れ、稼働率も92パーセントと非常に高い事をお話しされました。また、住民基本台帳カードを図書館の利用カードとして使えるようにし、現在県内の27市町村中、7市町の住基カードが登録可能である事を説明されました。「おくだけサーチ」という検索端末では、本を置くか、キーワード検索をすると書影とともに本の内容や関連の本を探すことができ、業務システムと連携しているため所蔵資料の所在や貸出可否等の確認ができるというシステムを紹介されました。その他に、南と北の出口にBDSを設置し、未処理資料の持出の管理ができ、職員はBDSで感知した資料名を監視端末で確認して利用者の対応ができることや、入館者数の管理もしているというをお話しされました。

 インターネット接続のシステムについては、館内インターネット利用端末は一般用が24台、青少年用が12台、合計36台あり、外部の7データベースが利用可能である事に触れられました。公衆無線LANは図書館でプロバイダ契約しているfreespotが使用可能であり、ソフトバンクも管理外だが使用可能であるという説明がありました。

 館内情報案内のシステムでは、デジタルサイネージを使って書庫出納番号、当日のイベントや図書館の利用案内、時期に応じた動画等を流しており、展示内容に関連付けてサイネージを構成しているというお話しをされました。

 施設・設備利用システムとしては、館内15台ある座席申込端末からサイレントルーム、インターネット利用端末、視聴覚ブースの申込みができる機能について説明されました。

 インターネットを活用した情報提供システムでは、SDI機能により、あらかじめ登録してあるキーワードに関連した新着情報をメールで提供している事と、横断検索や県内図書館の総合目録である山梨県図書館情報ネットワークシムテムを使って資料所蔵状況等を検索できる機能の説明がありました。

 新図書館開館に合わせて新しいHPを公開した図書館ホームページは、CMSパッケージのソフトを導入した事により、システム担当だけでなく各担当職員もコンテンツを修正、追加可能になった利点をお話しされました。また、子ども読書支援センターを大きな柱とし、子ども向けの新たなページも充実させた事と、マイライブラリにログインすると貸出の状況等も確認でき、利用者自身で読んだ本のリストを作ることができる等、利用者にとって非常に便利なシステムであることを紹介していただきました。

 マルチメディアを活用したシステムでは、山梨ポータルサイト「発見!やまなしナビ」を公開し、「山梨関係資料コーナー」から山梨関連の情報を発信し、甲州文庫に加え、新たに地域資料のデジタル化にとりくみ「山梨のデジタルアーカイブ」で公開しているとお話しされました。そのうち館内利用に限定された映像、音声資料は、利用者用パソコンで視聴予定となっているそうです。

 最後に、現在注目を集める電子書籍についてお話しをされました。山梨県立図書館では、現在1543タイトル、2771冊所蔵し、館内に電子書籍閲覧専用のタブレット端末を10台用意しているそうです。貸出冊数は3月末時点で559冊と少ないという問題点に触れ、図書館用電子書籍のコンテンツ充実が望まれるというお話しでまとめられました。

 

講演「地域に必要とされる図書館とは」

〈講師〉
 山梨県立図書館館長 阿刀田 高 氏

 協議会最終日には阿刀田高館長より「地域に必要とされる図書館とは」と題して、図書館にまつわる知識や創造、また図書館員の心得といったことを中心にお話をしていただきました。

 まず図書館のふたつの機能について触れ、ひとつに知識を提供する施設である「知の空間」であること、そして読書を通して楽しみを与える施設「くつろぎの空間」であるとされ、このふたつは厳密に区別ができないが、これを念頭に利用者が求めているものを感じ取り、接するべきであると述べられました。

 またレファレンスブックの重要性を挙げ、レファレンスブックの専門家である、という自負を図書館員は心の中に持っていて欲しいと述べられました。
 館長自身は、レファレンスブックの棚をみることを図書館のひとつの基準にしているとも述べられ、国会図書館勤務時代に本の分類を担当していたとき、自分の知らないことがたくさんあることに気付き、仕事の必要性もあって、各部門の概論を読んだ。自分の知らない分野を知りいろんな知識に対して一通り分類をすることを覚えレファレンスブックだけでは分類できない部分を補った、と自身の経験を述べられました。

 また、図書館員に求めることとして、いろんな知識に対して好奇心を持つこと、本好きであること、そして図書館員は知的な職業であると自覚し、専門的な知識を自分の中に培うことを挙げられました。
 阿刀田館長の信念として、知識という物はソウゾウのためにあるとお話しされ、「創造」と「想像」言い換えると「クリエーション」と「イマジネーション」、知識をクリエーションに結び付けることが重要であると述べられました。

 また、本とIT機器で得られる情報の違いについても述べられ、書店や図書館の書棚には探していた本の隣から非常に刺激的なものが得られるといった本の持つ独特の力に対して、IT機器を用いて早く広く安く過去のものを利用するだけでは、これからの新しいクリエーションの質を下げるとの考えを示されました。

 新しいクリエーションは自分の生きてきた道筋と無縁ではなく、その資料を大事にすることは郷土資料を、郷土の情報を大切にするポジティブで積極的な理由である、新しい物を含めて大切にすることをすすめると述べられ、講演は締めくくられました。

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各部会の活動について

児童奉仕研究部会

 児童奉仕研究部会は、子どもの読書活動の充実を図ることを目的に研究会、学習会を行っています。研究会はA~Eの5ブロックに分れ、隔月で開催しており、年度末には研究発表会を行っています。

 今年度は、平成26年2月6日にわかくさ生涯学習センターにおいて研究発表会を行い、各ブロックのテーマをもとにAブロック「ビブリオバトル」、Bブロック「小道具を使ったおはなし会」、Cブロック「アニマシオン」、Dブロック「おはなし会で使うわらべうたリスト」、Eブロック「乳幼児向けおはなし会」について成果を報告しました。各ブロックとも、すぐに実践に活かせる研究が多く紹介され、児童奉仕活動を行っていく中で参考になるものばかりでした。

 また、同日の午後に行われた学習会では、『赤毛のアン』の翻訳者で、今春放送予定のNHK朝の連続テレビ小説「花子とアン」の主人公、村岡花子(甲府市出身)について、「『赤毛のアン』の翻訳者・村岡花子の生涯」と題し、山梨県立文学館学芸員の中野和子氏に講演をしていただきました。村岡花子の生涯を年譜で追いながら解説していただき、山梨県と花子の関わりや、作品の背景となるものについての概略を理解することができました。また『赤毛のアン』の翻訳は、戦時中に行われたため花子が肌身離さず原書を持ち歩き、家中の原稿用紙をかきあつめながら続けたというエピソードにとても感銘を受けました。花子の生涯は翻訳者としてだけでなく、関東大震災や戦争を生き抜いた一人の女性としても大変魅力的で興味深いものでした。

 「花子とアン」の放映が始まると、図書館でも村岡花子について話題にのぼる機会が増えると思われるため、今回の学習会で得た知識を利用者に提供していきたいです。 今後も、児童奉仕研究部会は、子どもがよい本と出会える環境づくりを整えるため、さらなる研究を重ね、公共図書館の児童奉仕活動の現場で中心的な役割を果たせるよう、子どもの読書活動の充実に努めていきたいと思っています。

地域資料研究部会

 山梨県公共図書館協会地域資料研究部会は、山梨県にかかわる地域資料に関して、図書館等の施設における取り扱い方などに関する研究協議を行い、その成果を公表することによって、地域資料の保存、利用提供等、図書館サービスの質的向上に資することを活動の目的としています。

 今年度は2回部会を開き、第1回は総会と研究会「人物資料リスト」の追加・修正について行いました。第2回は山梨市にある根津記念館を視察し、郷土の偉人について学びました。根津記念館視察は大雪により開催日を延期したため、参加者は18名と例年の研修会より少なくなってしまいましたが、山梨市教育委員会の協力を得て館内を案内していただき、有意義な研修会を行いました。

 今後の活動内容として、地域資料に関する講演、事例発表、見学、山公図との共催による研修会の開催などを考えています。

読書推進研究部会

 読書推進研究部会は、読書推進に必要な調査及び研究を行い、学校図書館及び読書や書籍に関係する諸団体と協力・連携し、県全体の読書活動の充実と推進を図ることを目的に、今年度設置されました。

 主な活動としては、これまでの山梨県読書推進運動協議会の業務を引き継いだ「こどもの読書週間」「読書週間」の行事報告や優良読書グループ推薦等の他、はじめて山梨県立図書館との共催による読書活動推進のための研究会として教育シンポジウム「フィンランドから学ぶ子育て、地域づくり」を12月に開催しました。OECD生徒の学習到達度調査(PISA)において、上位にあるフィンランドの地域社会や教育システムなどを紹介いただき、子どもたちを育む環境の大切さを実感しました。

 今後は、学校図書館及び読書や書籍に関係する諸団体とも協力・連携し、県全体の読書活動の充実と推進を図っていきたいと考えています。

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平成25年度 県内事情

新館建設に関する動き

  • 山梨市では、市長が12月定例市議会の所信表明で、新市立図書館について2015年5月末の開館を目指す考えを示した。建設予定地の旧市役所本庁舎に入居していた企業との明け渡し交渉が和解したことから、2013年度中に解体工事、2014年度に本体工事を完了させる予定。

市町村立図書館の動き

  • 北杜市では、4月1日に「北杜市甲斐駒センターせせらぎ」内にむかわ図書館を開館した。県内随一の米所であり、樹齢2000年の「山高神代桜」があることから、米と桜の資料収集に力を入れている。
  • 甲府市では、公民館図書室へ司書を派遣し、室内のレイアウトや蔵書内容の見直し作業等の整備を始めた。市立図書館の分館的役割を担わせることを目指している。
  • 都留市では、子ども読書活動支援事業として、利用案内、推薦図書リスト、図書カード、利用登録申込書等を詰めた図書館バッグを、新小学1年生に配布した。
  • 笛吹市では、10月に図書館協議会が発足した。
  • 中央市では、職員が選定した本80冊を市内の中学1年生の教室に学級文庫として貸し出す「中1ブック便」を始めた。 富士山の世界文化遺産登録を受け、韮崎市では富士山資料コーナーの設置、甲斐市では写真コンクール入選作の展示、山中湖村では「富士山世界遺産情報局」を開設した。

学校図書館等の動き

  • 北杜市では市立学校図書館の電算化を行い、公共図書館とのシステム連携を進めている。運用開始は2014年4月を予定している。
  • 笛吹市では、市立浅川中学校が「第7回高橋松之助記念朝の読書大賞」を受賞した。約30年にわたり朝の読書活動を続けていること等が評価された。

県立図書館の動き

  • 2012年11月の開館からの入館者数が、5月に50万人、11月に100万人を達成した。入館者50万人を年間目標としていたが、目標をはるかに上回る入館者数となった。
  • 阿刀田館長による連続講座や出張トーク、図書館協力員や高校生との集い、半生を振り返る特別展のほか、館長企画による大沢在昌氏、吉岡忍氏、鴨下信一氏の講演会、朗読会やセミナー等多くのイベントを開催した。
  • 開館1周年記念事業として、浅田次郎氏講演会を11月17日に開催した。
  • 新館開館に合わせて導入した電子書籍について広く知ってもらうため、パネル展示と体験会を7月と11月に開催した。
  • 6月の富士山世界文化遺産登録に際しては、県の報告会がイベントスペースで行われたのを受け、関連資料展示や県政ニュース上映会を開催した。

その他の動き

  • 県教育委員会では、子どもや保護者から募集したお薦め図書をまとめたパンフレット「家読(うちどく)100選」を作成し、「家読フォーラム」を11月5日に県立図書館で開催した。
  • 中央市では、中学3年生への「卒業生ブックプレゼント」を開始した。市立図書館や学校図書館の司書が選定した40冊のリストから選んだ1冊が全員に贈られた。

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平成25年度事業報告 事務局だより

総会・全体研修会

5月31日(金) 甲府市立図書館 視聴覚室

  • 総会
    議題:平成24年度事業報告及び決算報告 平成25年度事業計画及び予算
  • 第1回全体研修会
    講演「日常業務に役立つ接遇マナー」
    講師:内田佳寿子氏(山梨県立図書館指定管理者総合案内・総務担当マネージャー)
    参加者:88名

平成25年度関東地区公共図書館協議会総会・研究発表大会

6月20日(木)~21日(金) 山梨県立図書館
テーマ:「地域の中の図書館」

  • 基調講演「知的創造と地域の仕事・生活に役立つ図書館に向けて」 
     〈講師〉 大串夏身氏(昭和女子大学特任教授)
  • パネルディスカッション「地域に交流とにぎわいを生み出す図書館の役割」
     〈パネリスト〉
       宮川大輔氏(春光堂書店)
       山本育夫氏(NPO法人つなぐ理事長)
       大串夏身氏(昭和女子大学特任教授)
       阿刀田高館長(山梨県立図書館長)
    〈コーディネーター〉
       日向良和氏(都留文科大学情報センター講師)
  • 研究発表「武蔵野プレイスがめざす機能連携とまちの活性化」
     〈発表者〉 三澤和宏氏(公益財団法人武蔵野生涯学習振興事業団武蔵野プレイス事業部館長)
  • 「"かいぶらり"の地域交流をささえる図書館情報システム」
     〈発表者〉 土橋みえ主幹(山梨県立図書館資料情報課)
  • 講演「地域に必要とされる図書館とは」
    〈講師〉 阿刀田高館長(山梨県立図書館長)

参加者:208名

第2回全体研修会

2月28日(金) 山梨県立図書館多目的ホール
 講演「地域と図書館」
  〈講師〉 花井裕一郎氏(長野県小布施町立図書館前館長・NPO法人小布施リズム代表)
 参加者:37名
 (山梨県立図書館主催第6回図書館員専門研修と合同開催)

地域資料研究部会

第1回 6月13日(水) 中央市立玉穂生涯学習館
第2回 2月20日(木) 根津記念館

児童奉仕研究部会

全体会  第1 回 6月26日(水) 笛吹市スコレーセンター
       第2 回 2月6日(木) わかくさ生涯学習センター

A支部         6回
B・C・D・E支部  5回

読書推進研究部会

研修会 12月15日(土) 山梨県立図書館多目的ホール
     教育シンポジウム「フィンランドから学ぶ子育て、地域づくり」
     (NPO法人子育て支援センターちびっこハウス主催、山梨県立図書館と共催)

刊行物


「山梨県の図書館2013-山梨県図書館白書-」
「こどもにすすめたい本2014」

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