? 戦前の相生小学校で、裸で色めがねをかけ保健室でうすい青紫色の光を放つ太陽燈を浴びたことがあったが、何のために行ったのか。

【回答】

戦前発行の学校保健に関する本『学校衛生概論』によると、太陽燈(人工高山太陽燈)の効能は、虚弱児童の体力増進、皮膚疾患の治療に有効とある。ただし、紫外線の照射の量や距離によっては有害な結果を招くおそれがあるので校医の監督のもと慎重に行うように、とも書かれている。また、『甲府教育百年史』に、相生小学校では1932(昭和7)〜1933(昭和8)年ごろ太陽燈を購入し、太陽燈室に虚弱児20人ずつ入って20分間保護眼鏡をかけて太陽燈に浴した、とあった。

【調査過程】
■郷土資料室の教育関係の資料を確認する。
■『甲府教育百年史』(田中憲著 甲府市教育委員会 1965)に相生小学校での太陽燈の使用の記載があったが、効能については書かれていない。
■インターネットで検索すると、東京の麹町小学校での事例がみつかる。全国的なものか。
■一般資料の学校保健、公衆衛生の歴史についての資料にあたるが、みあたらない。
■戦前に発行された当時の学校保健の資料を確認する。
■『学校衛生概論』(岡田道一著 中和会事務所 1934)に「人工高山太陽燈」の項目があり、紫外線の効能について詳しく書かれている。
■『学童保健読本』(柳沢信賢著 実業之日本社 1939)の「日光浴と紫外線」の項目に、太陽燈については記載がないが、紫外線の効能(病気の予防、殺菌作用など)について記載あり。
■『学校衛生と救急法』(岡田道一著 明治図書 1929)に麹町小学校の「日光浴室」の記載あり。虚弱児童の疾病予防、一般児童の健康増進のためとある。

【キーワード】
■太陽燈■紫外線■学校保健

【参考資料】
◆『甲府教育百年史』(田中憲著 甲府市教育委員会 1965)
◆『学校衛生概論』(岡田道一著 中和会事務所 1934)
◆『学童保健読本』(柳沢信賢著 実業之日本社 1939)
◆『学校衛生と救急法』(岡田道一著 明治図書 1929)

【調査にあたって】
郷土資料で事実の確認はできたが、効能については記載がみあたらなかったので、一般資料の当時(戦前)発行の資料にあたってみつけることができた。普段は手にとらないような古い資料が役に立った。現在では紫外線は有害なものというイメージが強いが、当時は基本的に健康に良いとされていたことも興味深かった。

作成日:2010/3/14