? 解体された甲府市役所の敷地には昭和初期まで県庁があったそうだが、そこに甲府市役所が移ってきたのは戦後と聞いた。その間、どんな施設があったのか?

【回答】

敷地の南側には、昭和6(1931)年に建てられた甲府郵便局舎が、敷地の中央付近には昭和13(1938)年に建てられた甲府市水道庁舎があった。
 県庁が現在地へ移転したのは、昭和5(1930)年。敷地は分割されて、甲府郵便局や甲府市などに売却された。甲府郵便局舎は戦災も免れ、昭和50(1975)年、甲府郵便局の移転により甲府市へ売却された。以降、平成22(2010)年に解体されるまでの35年間は、甲府市役所の4号館として活用された。水道庁舎は、戦災で相生にあった甲府市役所が焼失したため、昭和20(1945)年から甲府市役所としても使用された。以降、増床増築を繰り返しながら使用されたため、ムカデ庁舎と呼ばれた。昭和36(1961)年に、敷地内に甲府市役所の新庁舎が完成した後も、西庁舎として使用されたが、平成7年に取り壊され、駐車場になった。

【調査過程】
■県庁と市役所の両方があったことから、山梨県関係資料と甲府市関係資料の両面から調査を行う。県史、市史にも記述があるが、解体前に作成された調査報告書、『重ねた時の記憶を留める 甲府市庁舎1〜4号館調査報告書』(山梨建築設計監理事業協同組合 2010年)に詳細な記述があった。
■上記資料に甲府郵便局に関する記述があったので、郵便局関係の資料を調査したところ、『甲府郵便局八十年誌』(甲府郵便局八十年誌刊行会 1955年)に県庁跡地に郵便局舎を建設した経緯の記述があった。
■建物の様子を当時の甲府市街図(住宅地図等)や写真で確認。戦前の地図を調査したところ、昭和12年に出版された『甲府市地籍地図』(秋山峯太郎/編・製図  飯沼重吉 1937)があったが、甲府郵便局の他には、大きな建物は確認できなかった。また、当時の写真資料を調査したところ、『甲府物語』等に、戦前戦後の市役所、郵便局付近の写真を確認することができた。

【キーワード】
■甲府郵便局
■水道局庁舎
■甲府市役所
■甲府市庁舎

【参考資料】
◆『重ねた時の記憶を留める 甲府市庁舎1〜4号館調査報告書』(山梨建築設計監理事業協同組合 2010年)
◆『甲府郵便局八十年誌』(甲府郵便局八十年誌刊行会 1955年)

【調査にあたって】
甲府市の施設や道路の移り変わりは1960年頃までは住宅地図で細部まで調査することができる。
 また、回答には直接結びつかなかったが、利用者は、昭和時代の甲府中心部の写真を興味深そうに眺めておられ、様々な思い出がよみがえったように見受けられた。

作成日:20116/1