? 「三枕(さんちん)」という言葉の正確な意味と、その由来を知りたい。アイディアを思いつく状況を示す言葉で、中国の有名な人の言葉ではないか。

【回答】

文章を考えるのに適した場所としての「三上」は中国の政治家・学者欧陽修が友人の謝希深に語り『帰田録』に書いた言葉で、三上とは馬上・枕上・厠上(便所)のことである。

【調査過程】
■まずは『広辞苑』『日本国語大辞典』など国語辞典を引くが、いずれにも、三枕という言葉は出ていない。また、『名数数詞辞典』を引いてみるが、出ていない。
■中国の人の言葉ではないかということなので、『中国成語辞典』『中国故事成語大辞典』『中国分類詞典』『基礎中国語辞典』などを調べるが、こちらにも出ていない。
■もしかしたら「三枕」という言葉ではないのではないか?そこで「アイディア」という方面から調べることにし、一般書の『発想語典』(深川英雄著 電通 1990)を調べてみると、「三枕」ではなく「三上(さんじょう)」という言葉が記載されていた。これによると、「馬上・枕上・厠上(ばじょう・ちんじょう・しじょう)」がアイディアのひらめく状況として挙げられている。同様に、『インスピレーションが湧く104の方法』(斉藤勇著 乃木坂出版 1995)にも中国・北宋の文化人欧陽修が語った「三上の説」として紹介されている。
■改めて『日本国語大辞典』『広辞苑』を引くと、こちらにも「文章を練るのに最もよく考えがまとまる場所」と記載されている。また『広辞苑』でこの欧陽修は唐宋八大家の1人とわかた。
■『唐宋八大家文読本』3(新釈漢文大系72,明治書院 1996)に記載があり、これによると、欧陽修が友人の謝希深に語った言葉で、『帰田録』に収録されているとのことだった。

【キーワード】
■三上(サンジヨウ)■発想法■欧陽修(オウヨウシユウ)■「帰田録」(キデンロク)

【参考資料】
◆『インスピレーションが湧く104の方法』(斉藤勇著 乃木坂出版 1995)
◆『発想語典』(深川英雄著 電通 1990)
◆『唐宋八大家文読本』3(新釈漢文大系72,明治書院 1996)

【調査にあたって】
ちょっとした勘違いなので、国語辞典の前後の項目まで丹念に見ていればすぐに分かったのかもしれない。質問者がこの言葉の内容を比較的正確に記憶していたので、答えにたどりつくことができた。質問者からその質問に関しての情報を詳しく聞き出すことの大切さを改めて実感した。残念なのはこの『帰田録』を当館で所蔵していないことで、実際にどのように記載されているかが確認できなかったことだった。

作成日:2000/12/19