第13分科会 出版流通
テーマ「コロナ禍における情報利用行動と図書館」
【概要】
2010年代および2020年のコロナ禍における日本人の情報利用行動、出版界の動向、公共図書館の対応について、三人の専門家による報告を聞き、今後を展望する。
2010年代を通じて日本における紙の出版物の販売額は減少傾向にあった。一方で電子書籍の市場シェアはゆっくりと拡大しつつあり、電子コミックがその傾向を牽引している。電子書籍によって、2019年と2020年については、紙版と電子版を合計した出版販売額の前年比増がもたらされている。並行して、図書館関係者のあいだでは、出版産業にどう関わるべきかについてさまざまな議論がなされてきた。新型コロナ禍においては、公共図書館による電子書籍サービスを求める利用者の声が散見された。しかし、2010年代を通じてその導入に図書館は慎重なままであった。
この分科会では、過去10年の日本人の情報利用行動の変化の方向についてまず認識を共有し、そのうえで出版産業と図書館の今後について展望したい。すなわち、出版だけでなくテレビやインターネット含めた情報利用行動全般を検討したい。2010年代はスマートフォンが普及し、並行して広まったSNSは情報を取得するチャンネルの構成を変えた。そうしたなかで書籍はどのような位置を占めるのか。また電子書籍の売上はこのまま伸張するのかそれとも頭打ちになるのか。さらに、コロナ禍での図書館利用は変化したのか、そしてそれは一時期な傾向と考えてよいのか否か。これらの課題について議論する。
【発表者】
橋元 良明 (東京女子大学)
「活字消費を中心とする情報行動の変化とコロナ禍での動向」
星野 渉 (文化通信社)
「出版業界の動向」
淺野 隆夫 (札幌市中央図書館 利用サービス課長)
「公共図書館の状況と電子書籍サービスについて」

淺野 隆夫 (あさの たかお)
札幌市 中央図書館 利用サービス課長
1966年東京生まれ、札幌育ち。
北海道大学法学部を卒業後、1989年に札幌市役所に入庁、ITセクションの在籍が長く、情報拠点施設の建設や市役所ホームページのリニューアル等を行った。2010年に図書館に異動、図書館電算システムの再構築に併せて2014年に「札幌市電子図書館」を立ち上げ、札幌・北海道の出版社で構成される「北海道デジタル出版推進協会(HOPPA)」の設立にも助言を行った。
その後、「札幌市図書・情報館」のコンセプトづくりに着手、2018年の開館と同時に初代館長を務めた。2019年には同館がライブラリーオブザイヤーの大賞とオーディエンス賞を受賞。2020年から現職として、中央図書館と図書・情報館を所管している。また、総務省地域情報化アドバイザーとして全国の新しい図書館づくりにも参画している。この9月からは北海道武蔵女子短期大学で司書課程の講義も受け持つ。デジタルアーカイブ学会評議員。