第7分科会 著作権

テーマ「著作権法に関する動向と課題 : 令和3年改正著作権法を中心に」

 近年、著作権を巡る状況は大きく変動している。図書館の関わる制度改正では、2018(平成30)年、第37条関係 (視覚障害者等への公衆送信) やアーカイブの利用促進についての見直し、TPP11の発効による著作物等の保護期間の延長がされた。また、2020(令和2)年の改正では、違法ダウンロードに関する規制の改正が行われた。

 2021(令和3)年6月2日、「著作権法の一部を改正する法律」(法律52号)が公布された。改正著作権法では、「1. 図書館関係の権利制限規定の見直し」と「2. 放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化」の2点があげられており、「1. 図書館関係の権利制限規定の見直し」では「①国立国会図書館等による絶版等資料のインターネット送信」と「②各図書館等による図書館資料のメール送信等」があげられている。

 ①では、「特定絶版等資料」 (現在の図書館送信の送信対象資料である「絶版等資料」のうち、3か月以内に復刻等の予定があるものを除いたもの) の受信対象者を、個人だけでなく、一定の条件を満たした公共施設を含むような書き振りとされており、さらに、この場合、大型スクリーンでの表示もできることとしている。

 また、②では送信業務を適切に実施できる体制を構築した図書館等 (特定図書館等) が、補償金を支払うことで、著作物の一部分 (政令で定める場合には全部) をメールなどで送信することができることとされている。なお、この②においては、通常の複写サービスにおける複写可能な範囲について、最新号以外の雑誌や新聞などの記事論文の全部を複写可能としているのを、「国等の周知目的資料」その他の政令で定める資料に改正する内容となっており、政令の規定ぶりによっては現在の複写サービスに影響を与える可能性がある。

 実際の運用は、日図協や出版社を含む関係者の協議により具体化されることとされており、施行日は①は公布後1年以内、②は公布後2年以内の政令で定める日とされている。

 本分科会では、令和3年の著作権法改正を中心に、近年の著作権の動向とそれに対する日図協の対応について、著作権委員会から報告する。また、著作権に関する有識者や権利者および出版界の状況に精通した方等を招いて、シンポジウムを行う予定である。

(小池信彦 : JLA著作権委員会委員長、調布市立図書館)

主なタイムスケジュール

13時30分~14時   報告:著作権の動向とJLAの対応
(休憩10分)
14時10分~14時55分 発表:文化庁著作権課、全国公共図書館協議会、伊藤真氏
14時55分~15時   論点整理
15時~15時40分   シンポジウム
(休憩10分)
15時50分~16時30分 質疑応答
16時35分      閉会

報告

小池 信彦 (JLA著作権委員会委員長、調布市立図書館)
「著作権の動向とJLAの対応」

小池 信彦 (こいけ のぶひこ)

調布市立図書館主幹、日本図書館協会著作権委員会委員長。

2021年4月 現職に着任。

2013年、JLA著作権委員会委員長に就任、文化審議会著作権分科会委員も務めた。

発表

文化庁著作権課

吉田 光成 (よしだ みつなり)

文化庁著作権課長。2021年4月現職に着任。

発表

黒田 浩利 (全国公共図書館協議会)

黒田 浩利 (くろだ ひろとし)

東京都立中央図書館管理部長、全国公共図書館協議会事務局長。
2019年4月 現職に着任。
著作権法31条改正に際しては、全国公共図書館協議会事務局長として、文化庁への意見書提出、全公図内の著作権PTの立上げ等に関わり、現在に至る。

発表

伊藤 真 (ライツ法律特許事務所 弁護士・弁理士)

伊藤 真 (いとう まこと)

ライツ法律特許事務所 弁護士・弁理士。
1986年4月弁護士登録(第二東京弁護士会)、1987年11月弁理士登録。
現在、日弁連知的財産センター委員、著作権法学会会員(理事)、弁護士知財ネット会員(理事)、(一社)日本雑誌協会顧問、他。