? 『富士山の自然界』に掲載されている小野湖山の漢詩の書き下し文はないか。

【回答】

漢詩のタイトルは「登嶽」で、富士山に登ったときの詩。『日本漢詩鑑賞辞典』(猪口篤志著 角川書店 1980)に読み下し、意味の解説がある。小野湖山(1814〜1910)、漢詩人。名は長愿。近江の医師横山玄篤の子。吉田藩に儒臣として任官したが、尊皇攘夷を唱え、安政の大獄の時には8年間禁錮幽閉された。維新後は総裁局権弁事などを務めた。廃藩置県後は東京に出て、のち大阪に優遊吟社を結成するなど詩壇に名をはせた。『湖山楼詩鈔』8巻等の著作がある。

【調査過程】
■『富士山の自然界』(山梨県 1925)のp204に「鶴駕鸞驂……」に始まる詩が掲載されていることを確認。漢詩はそれ1つが1ページに掲載されていて、前後には特に解説もなし。
■『山梨百科事典』増補改訂(山梨日日新聞社 1989)で「小野湖山」を検索するが、項目なし。
■自館システムの辞書(人名・件名)検索で「オノ コザン」を検索。『小野湖山翁小伝』(豊橋市 教育委員会 1931)があることがわかる。甲州文庫に『湖山楼詩集』(玉池吟社 1859)があったが、調査している詩はなし。
■『小野湖山翁小伝』から郷土の人ではないことがわかり、著名な人らしいこともわかった。もしかして掲載があるかもしれないと思って、『日本漢詩鑑賞辞典』を引いてみる。「湖山小野長愿」で3項目掲載があり、そのうちの「登嶽」が目的のものとわかる。読み下しと意味があった。

【キーワード】
■小野湖山(オノコザン)■「登嶽」■漢詩■富士山

【参考資料】
◆『日本漢詩鑑賞辞典』(猪口篤志著 角川書店 1980)

【調査にあたって】
最初、郷土人だと思って調査していたが、進めていくうちに全然違うことが判明。漢詩人として名をなした人であることがわかった。そうなると、調査に使う資料は郷土資料以外のものが中心になる。ときとして、調べていくうちに、郷土資料以外の資料の方が有効だったり、またインタビューの段階でよくよく聞いていくと実は郷土のことではなかったというのが出てくる。特に、「甲州」という言葉がつく固有名詞とか、「武田氏」についてそれがいえる。そうなると、郷土資料と一般資料の両方を駆使してあたることになる。この質問のホントの元は『火の山−山猿記』(津島祐子著 講談社 1998)。この小説に『富士山の自然界』から引用がなされていた。『火の山』は谷崎潤一郎賞なども受賞した話題作。それならではの質問、といったところであろうか。

作成日:2000/3/31