? 戦国期から江戸期にかけての特産物であった甲州漆について研究している人はいるか。また、研究書や研究論文はあるか。

【回答】

『山梨の歴史景観』に書かれているとおり、甲州漆については桑原家の文書などに見えるが、漆の生産・流通に関わる文書が欠けるためか、県内で特に研究している方、また漆を対象とした論文なども見当たらない。各市町村誌などにわずかな記述がみられる程度である。

【調査過程】
■質問者は『山梨の歴史景観』(山梨郷土研究会編 山梨日日新聞社 1999)にある「漆」についての記述を見たということなので本書を確認すると、『甲陽軍艦』「桑原家文書」『古山日記』『裏見寒話』の甲州漆に関する記述を紹介しているが、あまり詳しいものではない。このページの執筆者が笹本正治氏であったので、笹本氏の著作を自館システムで検索し、本にあたるが、漆についての詳しい論文のようなものは載っていない。
■『山梨郷土史研究入門』(山梨郷土研究会編 山梨日日新聞社 1992)の「特産物生産の展開」の項目には、漆に関する論文や文献についての記述はない。
■レファレンスのために作成した「甲斐路」や「武田氏研究」などの県内の歴史研究雑誌の目次のコピーを綴ったファイルから該当するような論文を探すが、見当たらない。
■『山梨百科事典』(山梨日日新聞社 1989)で、「甲州漆」「ウルシ」をひいてみると、『山梨の歴史景観』に書かれているような説明があり、現在の牧丘町、敷島町などが生産地としてあげられていた。各町村誌をみてみると、漆に関する記述があったが、それほど詳しくはない。
■武田氏の時代からの特産物であるので、武田氏の資料にあたると『戦国文書聚影』武田氏篇(戦国文書研究会編 柏書房 1973)の付録資料に漆についての記述があったが、論文といえるほどの詳しさではない。
■図書館にいらしていた甲州の近世に詳しい研究者の方にうかがうと、漆については流通や生産に関わる文書、史料が少ないので、特に漆について研究してる人はいないだろうとのこと。

【キーワード】
■漆■甲州漆■特産物

【参考資料】
◆『山梨百科事典』(山梨日日新聞社 1989)
◆『山梨の歴史景観』(山梨郷土研究会編 山梨日日新聞社 1999)
◆『戦国文書聚影』武田氏篇(戦国文書研究会編 柏書房 1973)

【調査にあたって】
有名な特産物なのでそれに関する論文ならすぐにみつかるだろうと思っていたが、意外と見当たらない。最後、研究者の方の一言で納得。

作成日:2000/12/17