? 雑誌「アサヒグラフ」(1982年1月24日号)に記載されていた、明治初期に南アルプス鳳凰山中で発見されたという「五器曳一簇」について、山梨県関係の文献の中に出てくるものがあれば知りたい。「甲斐犬」に関係する文献の中に出てきたように記憶しているが、この一族が大事にしていたという「甲斐犬」との関わりについても詳しい文献があれば知りたい。

【回答】

五器曳一簇とは、鳳凰山の山中でろくろで碗器などを生産していた山窩民族。社会と隔絶した生活を営み、実態はあきらかではない。甲斐犬との関連については、当館の資料の中には見あたらない。

【調査過程】
■「甲斐犬」に関する所蔵資料から調査を開始するが「五器曳一簇」についての記述はない。
■鳳凰山とのかかわりから『芦安村誌』などを探すが記述なし。
■質問者からの手紙の中にあった「山窩」及び「民族学」という言葉から「民俗学」を想定し、『綜合日本民俗語彙』2(民俗学研究所編 平凡社 1955)の索引で「五器曳一簇」を検索してみるが、記載なし。
■次に『定本柳田国男集』別巻5(筑摩書房 1971)を検索すると「御器挽き(五器曳き)」という語句があり、該当巻を調べたところ、明治25年1月7日付け山梨日日新聞に「五器曳の家族」に関する記事が掲載されたことがわかった。同記事に詳細な記述があるが、いずれの文献にも「甲斐犬」との関連は出てこない。
■同時期に行っていた別の調査で、「木地屋と山村」(土橋里木著,「甲斐路」No.59所収,山梨郷土研究会 1987)に「五器曳一簇」に関する論究があることがわかり、あわせて回答することにした。

【キーワード】
■五器曳一簇(ゴキヒキイチゾク)■山窩■甲斐犬

【参考資料】
◆『定本柳田国男集』別巻5(筑摩書房 1971)
◆「甲斐路」No.59 木地屋と山村(山梨郷土研究会 1987)

【調査にあたって】
民俗学の分野ではないかという着想が、解決への最も大きなヒントだった。結局「五器曳一簇」と「甲斐犬」とのつながりを示す資料にはたどりつけなかったが、「五器曳一簇」に関する山梨日日新聞の記事は今後の資料としても有効であろう。

作成日:2001/3/18