? 正岡子規『竹の里歌』にある甲州一五坊とは誰か知りたい。

【回答】

「一五坊」は子規門俳人である新免一五坊(1879〜1941)のこと。一五坊は、山梨県在住中には白雛会に属して後進を指導した。

【調査過程】
■依頼者に出典を確認。正岡子規の歌集『竹乃里歌』の明治35年の長歌の詞書にあるとのこと。
■自館システムで「タケノサトウタ」を書名検索し、『子規全集』6巻(正岡子規著 講談社 1977)を見ると、「竹乃里歌拾遺」の「おくられものくさぐさ」に「やまめ(川魚)三尾は甲州の一五坊より」とある。「一五坊」についての注はないが、地名ではなく人名(イチゴボウという俳号)だと判断する。
■『子規全集』22巻の年譜で明治35年を見ると、8月16日の部分に「やまめ三尾(新免一五坊より)」の記載あり。同書の「子規門俳人略伝」を見ていくと「新免一五坊」は岡山県出身だが、山梨県にもいた旨の記述あり。
■『詩歌人名事典』(日外アソシエーツ 1993)などで「新免一五坊」を探すが記載なし。
■『岡山県歴史人物事典』(山陽新聞社 1994)に「新免一五坊」の記載あり。

【キーワード】
■正岡子規■新免一五坊(しんめんいちごぼう)■「竹乃里歌」■俳人

【参考資料】
◆『子規全集』22巻(正岡子規著 講談社 1978)
◆『岡山県歴史人物事典』(山陽新聞社 1994)

【調査にあたって】
"依頼者は「地名だと思い『角川日本地名大辞典』を見たが載っていなかった」とのこと。そこで、「竹乃里歌拾遺」のこの部分を見ると、子規晩年の病床で、お見舞いにもらった品々に対して長歌を作ったもので、「やまべ(川魚)やまと芋は節より」(長塚節より)という記述があることから、「一五坊」についても同様に人名であるだろうと判断した。このように、調査に取りかかる時、まず最初にその質問の出典をあたると回答のヒントが得られることがよくある。専門家による解説や注を見ればわかるだろうと思ったが、該当部分については注などがなかった。しかし年譜により新免一五坊という人物であることがわかった。また、「子規門俳人略伝」の項により、山梨県にいたことが確認できた。更に名前の読み等を確認するために人名事典を用いた。『岡山県歴史人物事典』(山陽新聞社 1994)は古代から現代に至る5,100人を収録している地域人名事典。岡山県については、このほかに『岡山県大百科事典』全2巻(山陽新聞社 1979)もある。このような各県ごとの事典は、中央では活躍しなかった地方の文化人を調べる場合などにとても便利である。"

作成日:1998/7/14