? 江戸時代の文書は、漢字・平仮名・片仮名で書かれているが、平仮名と片仮名はどのように使い分けられていたのか知りたい。

【回答】

和漢混淆文である近世文書では、ふつうの仮名書きの部分は平仮名・変体仮名が用いられ、助詞、動詞・形容詞の活用語尾、副詞の送り仮名など、漢文の送り仮名にあたる部分を、漢文同様に片仮名で書く。

【調査過程】
■『世界大百科事典』5巻(平凡社 1988)で「かな」の項を引くと、平仮名と片仮名の歴史について記述があり、片仮名は漢文のヨミを記入するために使用されたものであることなどがわかる。
■自館システムで「カナ」を辞書(件名)検索。ヒットした資料のうちの『江戸のかな−おもしろ古文書館−』(樋口政則著 名著出版 1991)を見ると、山田俊雄著「近代・現代の文字」(『講座国語史』2巻「音韻史・文学史」(中田祝夫編 大修館書店 1972)収載)では、「柳多留」の片仮名を分析し、片仮名は「(一)活用語尾を示す、(二)捨てがなとして用いて読み方を明らかにするというふたつの性格に帰する」と記載あり。この資料の所蔵について自館システムで検索すると、所蔵しており内容を確認。
■「NDC210.02 日本史、歴史補助学」の書架に行き、古文書を読むための入門書を探す。『用字・用語古文書の読み方』(若尾俊平著 柏書房 1980)を見ると、「仮名」という項目の「平仮名」「片仮名」の項に、それぞれの使われかたについての解説あり。

【キーワード】
■古文書■仮名■江戸時代

【参考資料】
◆『江戸のかな−おもしろ古文書館−』(樋口政則著 名著出版 1991)
◆『講座国語史』2巻「音韻史・文学史」(中田祝夫編 大修館書店 1972)
◆『用字・用語古文書の読み方』(若尾俊平著 柏書房 1980)

【調査にあたって】
当初は平仮名や片仮名の歴史に関係があるのかと思い、「文字」という方向からアプローチした。『江戸のかな−おもしろ古文書館−』は、言語の分類が付与されている本だが、平仮名で書かれた古文書を読むという内容の本だった。そこで、「古文書解読」という観点からも探した方がよいだろうと判断した。昨年度、甲州文庫の電子化事業の作業の中で近世文書を扱った。和風の漢文で書かれた文中には、ヨミの補助のような形で片仮名が使われていた。その時は特に疑問も持たずに、こういうものなのかと思っていたのだが、質問を受けて初めて、そう言われれば不思議だと思った。明治時代までは公式な文書は全て漢文で書かれたそうだが、現代では漢文を書くこともなくなり、片仮名は外来語や擬音語などを書くときに用いている。現代の感覚で考えるととても不思議な江戸時代の文書だが、歴史的な経緯を見ると「なるほど」と思えた。

作成日:1999/6/9