? テレビドラマ「元禄繚乱」に出てきた「一向二裏(いっこうにり)」という言葉の意味を知りたい。

【回答】

「一向二裏(の備)」は、兵法の陣立ての一つで、一軍を敵の正面に向かわせ、もう一軍を敵の後陣の裏に回らせて敵を討つ陣形。

【調査過程】
■『新明解四字熟語辞典』(三省堂 1998)を見るが記載なし。「一向所感」という言葉があり、「仏教語」と記載。
■『仏教四文字熟語事辞典上巻(須藤隆仙著 新人物往来社 1998)を見る。「一向専修」という言葉はあるが「一向二裏」は記載なし。
■『日本国語大辞典』2巻(小学館 1973)を見ると、「一向二裏備」の項があり、「陣立ての名称……」などと記載あり。また、用例として「古事類苑・兵事二」「武教全書 二・練 陣」が挙げられている。
■『古事類苑』43巻「兵事部」(吉川弘文館 1968)を確認すると、「兵事部二・陣法」の「雑陣」として、「一向二裏の備の事」がある。また、自館システムで「ブキヨウゼンシヨ」を書名検索すると、『山鹿素行集』2巻(目黒書店 1943)がヒット。内容を確認すると、「武教全書巻之二・練陣」に「一向二裏の事」があり。
■『大漢和辞典(修訂版)』1巻(諸橋轍次著 大修館書店 1984)、『広辞苑』第5版(新村出編 岩波書店 1989)を見るが、これらには記載なし。

【キーワード】
■一向二裏の備(イツコウニリノソナエ)■兵法■陣形

【参考資料】
◆『古事類苑』43巻「兵事部」(吉川弘文館 1968)
◆『日本国語大辞典』2巻(小学館 1973)
◆『山鹿素行集』2巻(目黒書店 1943)

【調査にあたって】
自分もその番組を見ていたのだが、どんな場面で使われていたのかはすっかり忘れていた。依頼者の方も同様で、二人して四字熟語かと勘違いしてしまい、「一向」を使った仏教の言葉があったので、更に仏教用語かと勘違いしてしまった。基本に戻って『日本国語大辞典』を見ると、兵法の言葉だった。NHK大河ドラマの「元禄繚乱」(平成11年1月〜12月放映)はいわゆる「忠臣蔵」の物語で、「一向二裏」という言葉は、赤穂藩士が教えを受けていた山鹿素行の「武教全書」の中にも出てくることがわかった。

作成日:1999/11/26