? “天鑑私無”の読み方と出典を知りたい。

【回答】

読みは「テンカンワタクシナシ」。出典は『天草版金句集』。

【調査過程】
■『四字熟語活用辞典』(石本道明編 創拓社 1993)、『格言大辞典』(芳賀矢一ほか編 東出版 1995)、『中国古典名言事典』(諸橋轍次著 講談社 1972)、『漢詩漢文名言辞典』(鈴木修次編著 東京書籍 1985)、『中国故事成語大辞典』(和泉新,佐藤保共編 東京堂出版 1992)、『中国成語辞典』(牛島徳次著 東方書店 1994)等には記載なし。
■『大漢語林』(鎌田正,米山寅太郎共著 大修館書店 1992)に「テンカン」の項があり、「天鑑」と「天監」の2種類の漢字表記がされている。
■『日本国語大辞典』14巻(小学館 1975)の「テンカン」の項では、「天鑑」の表記はないが、「天監」についての記述あり。用例の中に「日葡辞書 Tencan(テンカン)ワタクシナシ」と記されている。
■『邦訳日葡辞書』(土井忠生ほか編訳 岩波書店 1980)で、「Tencan テンカン(天鑑)」の項を見る。「Tencan vatacuxinaxi(天鑑私なし)」の用例があり、「デウス(Deos 神)は、人によって分けへだてすることなく、公正に万事を御覧になる」と説明されている。『天草版金句集』(1593年)のp541と出典が記載。

【キーワード】
■天鑑私無(テンカンワタクシナシ)■「天草版金句集」■名言

【参考資料】
◆『邦訳日葡辞書』(土井忠生ほか編訳 岩波書店 1980)

【調査にあたって】
おそらく中国起源の故事成語、格言だろうと思って調べてみたところ出てこない。あれっと思って「天鑑私無」を眺めていると、もし漢文だったらこのような語順にならないのではないかと気づいた。まず「天鑑」という言葉の使われ方を確認してみようと、漢和、国語辞典をあたったところ、用例から出典にたどり着くことができた。しかし、「天鑑私無」という字の並びから、キリスト教の神が出てくることは全く想像していなかったので、『天草版金句集』の名前が出てきたときには驚かされた。

作成日:2000/3/31