? “グランド・クロス”についての天文学的な資料があるか。

【回答】

“グランド・クロス”は占星術などの用語で、天文学用語ではない。また、惑星の配置も無理に見れば十字形に見えないこともないが、天文学的には、意味のあるものではない。

【調査過程】
■依頼者によると“グランド・クロス”は、ノストラダムスの予言の中に出てくる言葉で、太陽系の惑星が地球を中心に十字形に並ぶ現象である。また、天文学の資料はいくつかあたったが、該当の記載はなかったとのこと。
■『占星術大全』(ジャン・カレルズ著 阿部秀典訳 青土社 1996)にある「占星術と天文の事典」を見ると、「グランド・クロス(大十字)」の項があり、「めずらしい占星術上の星位」などの解説あり。
■『天文学辞典』改訂増補版(鈴木敬信著 地人書館 1991)などの天文学事典の索引で、“グランド・クロス”を探すがなし。また、「太陽系」「惑星」などの項目も見るが、このような内容の事柄の記載なし。また、この現象は平成11年の8月とのことなので、『天文観測年表』1999年版(天文観測年表編集委員会編 地人書館 1999)、『天文年鑑』1999年版(天文年鑑編集委員会編 誠文堂新光社 1998)を見るが、記載なし。
■自館システムで「タイヨウケイ」を辞書(件名)検索すると、『太陽系なんでも入門』(斉田博著 小学館 1982)がヒットし、内容を確認すると、「地球は破めつするか?」の項に、「一九九九年に、惑星が十字かの形にならぶ(これをグランド・クロスというのだそうです)ので地球が破めつするというおそろしい話があります」、しかし惑星が十字架に並んでも意味はない、などの若干の説明がある。「著者紹介」を見ると、著者は日本天文学会などで活躍している学者のようだ。
■山梨県立科学館(〒400-0023 甲府市愛宕町358-1 TEL.055-254-8151)に電話で問い合わせると、「“グランド・クロス”は占星術や一部の宗教などで用いている言葉だが、天文学的には根拠がない」とのことで、国立天文台のインターネットのホームページ中の「国立天文台・天文ニュース」を紹介される。
■インターネットの検索エンジン「Yahoo!Japan」(http://www.yahoo.co.jp/)で「国立天文台」を検索し、「文部省国立天文台」(http://www.nao.ac.jp/)の「国立天文台・天文ニュース」No.282(1999年8月12日)を見ると、「グランド・クロスは、天文学で定められた用語ではなく」、また「この時期の惑星の配置を見ると、無理に見れば、十字形に見えないこともありません」などの解説あり。

【キーワード】
■グランド・クロス■占星術■惑星■ミカエル・ノストラダムス

【参考資料】
◆『太陽系なんでも入門』(斉田博著 小学館 1982)

【調査にあたって】
「“グランド・クロス”は天文学用語ではない」という回答であるが、「ない」ということを証明するための資料がなく、平成10年7月にオープンした山梨県立科学館に問い合わせた。すると、この時期、同様の質問が多く寄せられているとのこと。紹介していただいた国立天文台のホームページにも、このような質問が多く寄せられ「多大な迷惑をこうむっています」とあった。この時期、インターネットの検索エンジンで「グランドクロス」を検索すると、「他の惑星からの引力の影響を受ける」とか「洪水が起きるから高い場所に避難するように」とか多種多様な情報がヒットした。膨大な量の情報の中から、正しい情報を選択する力も必要な時代だと思う。

作成日:1999/8/19