? 『源氏物語』「胡蝶」に出てくる「太田の松」はどこにあるか。

【回答】

美濃、遠江、また未詳など諸説あり、はっきりとは分っていない。

【調査過程】
■『源氏物語評釈』5(玉上琢弥著 角川書店 1978)を見てみると、歌枕であると書かれてはいるが、それ以上の記述はない。
■『新編日本古典文学全集』22(小学館 1996)を見てみると、「「太田の松」は兼盛集にもみえる。歌枕だが、詳細は未詳」とある。
■『歌ことば歌枕大辞典』(久保田淳 馬場あき子共編 角川書店 1999)『歌枕歌ことば辞典』(片桐洋一著 笠間書院 1999)など歌枕に関する事典や『日本歌語事典』(佐佐木幸綱ほか編 大修館書店 1994)などを見るが、記載されていない。
■『源氏物語図典』(秋山虔,小町谷照彦共編 小学館 1997)には「美濃か」と書かれており、確定はしていない。
■『源氏物語事典』上(池田亀鑑編 東京堂出版 1973)では、『類字名所外集』で「「未勘国」とし、「遠江周智郡太田於保田」と注する(和名抄)が、確証はない」と記している。また『和名抄』では「おほた」はこの他に6カ所あるということである。
■『古代地名大辞典』本編(角川書店 1999)では「太田郷」「太田荘」という地名は全国各地に多数あり、特定するのは難しいことがわかる。

【キーワード】
■「源氏物語」■太田の松■胡蝶

【参考資料】
◆『源氏物語評釈』5(玉上琢弥著 角川書店 1978)
◆『源氏物語事典』上(池田亀鑑編 東京堂出版 1973)
◆『源氏物語図典』(秋山虔,小町谷照彦共編 小学館 1997)
◆『新編日本古典文学全集』22(小学館 1996)

【調査にあたって】
この「太田の松」は「こひわびぬ太田の松の大方は色に出でてやあはむといはまし」という歌を引き合いに出して書かれているということである。歌意は「恋しくてたまらないから、はっきりと逢いたいとあの人に言ってみたい」(『新編日本古典文学全集』22)。『河海抄』や『花鳥余情』ではこの歌は『六帖』にあるとしているが(この2つを確認したところ、たしかにそう書かれている)、現存する『六帖』本編には載っていないということである(『源氏物語事典』上)。「太田の松」はどこにあるかを本格的に研究してもおもしろいのではないかと思う調査結果だった。

作成日:2000/12/7