? 寫奏一対、七紫三羊一対とは何のことか。

【回答】

『文房四宝 筆の話』によると、「寫奏」は、中国の筆の老舗「李鼎和」にあった小筆。先のよくきく筆で榊莫山が愛用していた。文化大革命がおこってまもなく「寫奏」の名は「寫巻」に変わった。「七紫三羊」は兎七、羊三の割合で作った筆という意味を、小筆の名に示しているものである。

【調査過程】
■数字の入った言葉であったので、『数のつく日本語辞典』(森睦彦著 東京堂出版  1999)にあたるが記載なし。
■『大漢和辞典』(諸橋轍次著 大修館書店 1960)にあたってみると、「寫奏」の記載はなかったが、「七紫三羊毫」という記載があり、水筆の一種で羊毛の割合から名づけるという説明があった。
■次に、「対」という単位が「筆」に使われているかどうか調査してみた。『商用単位事典』(篠崎晃雄著 実業之日本社 1974)によると、「筆」は巻・茎・本という数え方をするとあった。『図解単位の歴史事典』(小泉袈裟勝編著 柏書房 1989)にあたると、「対」という数え方は二個一組を単位に数えるときに用いる語とあり、扇・燭台・花いけなどに使われるとあった。『単位の辞典』(ラテイス 1981)にあたるが「対」の項には「筆」の記載はなかった。しかし、巻末の「ものの数え方」の「筆」のところに巻・管・対という数え方が載っていた。
■この言葉がでてくる『最後のひと』(山本夏彦著 文芸春秋 1990)を確認すると、「虎ノ門の晩翠軒」で購入したという記載がある。「晩翠軒」をインターネットで検索してみると、書道関係の出版や販売をしている会社が現在も虎ノ門にあることが判明した。
■以上の調査結果から、両方とも筆のことだろうと推測し、書道用具関係の書籍にあたってみた。『書道辞典』(飯島春敬編 東京堂出版 1995)等の辞典類に記載はなかった。『文房四宝 筆の話』(榊莫山著 角川書店 1981)に「寫奏」と「七紫三羊」の記載があった。

【キーワード】
■寫奏(シヤソウ)■七紫三羊(シチシサンヨウ)■筆

【参考資料】
◆『文房四宝 筆の話』(榊莫山著 角川書店 1981)

【調査にあたって】
どういう種類の事柄を表す言葉か全くわからない状況での調査だったので、まずどの書籍にあたるかがポイントであった。事柄・言葉の意味をまず把握するためには「百科事典」「国語辞典」「漢和辞典」などにあたることが重要であるとあらためて感じた調査であった。

作成日:2000/12/15