? “オオムラサキ”という蝶の名が初めて文献に登場したのはいつか。

【回答】

宮島幹之助の「日本蝶類図説」(「動物学雑誌」1899〜1900年掲載)で初めて「オホムラサキ」という名称が使われた。

【調査過程】
■『原色日本蝶類図鑑』(保育社 1976)、『世界大百科事典』4巻(平凡社 1988)などで「オオムラサキ」の項を見るが、記載なし。
■『日本国語大辞典』3巻(小学館 1973)で「おおむらさき」を見ると、古典的な文献資料の記載例はない。『古事類苑』48巻「動物部」(吉川弘文館 1970)で「てふ」を見ると、「緑蝶」、「紺蝶」、「黄蝶」、「鳳蝶」などの種類の記載があるがオオムラサキの名前は見られない。また、『和漢三才図会』7巻(寺島良安著 平凡社 1987)にもオオムラサキの名は見られない。
■「NDC468 昆虫」の書架に行く。何冊か手に取った中の『日本蝶命名小史』(磐瀬太郎著 菊池書店 1984)に「王者の貫禄−オオムラサキとその一統」があり、オオムラサキは江戸時代後半には「ヨロイチョウ」と記されており、次に「ムラサキチョウ」の名で書物に記載され、宮島幹之助博士が「動物学雑誌」(日本動物学会発行)に「日本蝶類図説」(1899〜1900年)を書いたとき「オホムラサキ」と記載した旨記述あり。

【キーワード】
■オオムラサキ■蝶■昆虫

【参考資料】
◆『日本蝶命名小史』(磐瀬太郎著 菊池書店 1984)
◆『日本蝶類図説』『日本蝶類図説』(宮島幹之助著 成美堂 1908)

【調査にあたって】
オオムラサキは国蝶なので、古くから日本にいて文献にも登場しているのだろうと思い、古典的な文献資料の記載を探した。しかし、調べていくうちに、現在のような蝶の分類や、それに伴う命名が行われるようになったのは、江戸時代の終わり頃からだとわかった。それまでは蝶と蛾の区別もついていなかったようだ。古典的な文献資料の中には「オオムラサキ」の名は見当たらないが、おそらく他の大型の蝶とともに「揚羽(の蝶)」などと言われていたのだろう。当館では「動物学雑誌」(日本動物学会発行)は所蔵していないが、『日本蝶類図説』(宮島幹之助著 成美堂 1908)がある。これは「動物学雑誌」掲載(初出)の論文を改訂したもの。この本のp135に「オホムラサキ」の記載がある。

作成日:1999/1/28