? 野口英世の母親がひらがなで書いた英世あての手紙を読みたい。

【回答】

野口英世の母親シカが英世に宛てた手紙は、明治45年1月23日付の一通のみ。シカは、幼い頃から子守奉公でろくろく文字を習わなかったが、アメリカにいる英世に手紙を書くため一生懸命に字をおぼえて、ひらがなばかりの手紙を出した。『野口英世』(筑波常治著 講談社 1980)p.178にその全文が掲載。甲府市立図書館ほかで所蔵。

【調査過程】
■『世界伝記大事典 日本・朝鮮・中国編』4巻(ほるぷ出版 1978)で「野口英世」の項を見ると、母親の名前は「シカ」であることがわかる。
■自館システムで「ノグチ シカ」を辞書(人名)検索すると『野口英世の母』(宮瀬睦夫著 淡山書房 1949)がヒットし、内容を見るが手紙の掲載なし。また、『近代名作館』2巻(桑名靖治編 1995)所収の「手紙」(野口シカ著)が新刊情報としてヒット。
■『近代名作館』2巻について、山梨県図書館情報ネットワークシステムで検索するがヒットせず。
■自館システムで「ノグチ ヒデヨ」を辞書(件名)検索し、野口英世の伝記を見ると、その中の一冊『野口英世』(イザベル・R・プレセット著 中井久夫,枡谷好弘訳 星和書店 1987)に手紙の一部分が掲載、巻末にその部分の注として「本書の再録は筑波常治『野口英世』一七八ページによる」と記載あり。
■『野口英世』(筑波常治著)について山梨県図書館情報ネットワークシステムで検索すると、甲府市立図書館などで『野口英世』(筑波常治著 講談社 1980)を所蔵しており、甲府市立図書館では現在その本が在庫であることがわかる。
■甲府市立図書館に内容の確認を依頼。手紙の全文が掲載されている旨回答あり。

【キーワード】
■野口英世■野口シカ■書簡

【参考資料】
◆『野口英世』(イザベル・R・プレセット著 中井久夫,枡谷好弘訳 星和書店 1987)
◆『野口英世(おもしろくてやくにたつ子どもの伝記1)』(浜野卓也文 ポプラ社 1998)
◆『手紙と人生』(大河内忠蔵著 ポプラ社 1978)

【調査にあたって】
“新刊情報”とは、新刊として発行された書籍のデータが、過去5年分入力されているもの。当館ではこの資料を所蔵していなかったので、山梨県図書館情報ネットワークシステムで県内の所蔵先を探したがなかった。そこで、野口英世の伝記の中で手紙の掲載があるものを探すと、抜粋を掲載したものしか見付けられなかったが、手紙の全文が掲載されている本の紹介があったので、もう一度県内の図書館の中で所蔵先を検索した。山梨県図書館情報ネットワークシステムは、山梨県内の公共図書館の総合目録で、21館がデータを提供しており(平成11年3月末現在)、インターネット上でも公開している(http://www.manabi.pref.yamanashi.jp:8080/)。相互貸借の依頼・受付などもでき、当館と甲府市立図書館については動態(貸出中かどうか)もわかる。回答に用いた資料は、所蔵館の甲府市立図書館に相互貸借をお願いし、依頼者に貸出した。ところが後日、先輩職員に「こんなレファレンスがあった」などと話すと、「野口英世の母親の手紙なら当館にもある」と言われ、『野口英世(おもしろくてやくにたつ子どもの伝記1)』(浜野卓也文 ポプラ社 1998)、『手紙と人生』(大河内忠蔵著 ポプラ社 1978)の2冊(いずれも児童書)を紹介された。児童書や、手紙の例として取り上げられていることまでは、考えが及ばなかった。また、野口英世をモデルにした小説『遠き落日』下巻(渡辺淳一著 角川書店 1979)にも原文のまま引用されている。検索システムや索引類で探せない事例については、自館システムに電算入力しデータベース化しているので、次に同様の質問があったときには、これらの資料を提供できる。なお、作家・芸術家・政治家・思想家の書簡を探すツールとしては、『日記書簡集解題目録』全2巻(日外アソシエーツ編・発行 1997〜1998)がある。

作成日:1999/2/23