? ルパン全集の最後の5巻は原作者の死後書かれたものだそうだが、誰が書いたのか。また、その作家について知りたい。(中学2年)

【回答】

『怪盗ルパン全集』全30巻(モーリス・ルブラン著 南洋一郎訳 ポプラ社 1980)の26卷〜30卷は、モーリス・ルブランのメモをもとにピエール・ボアローとトーマ・ナルスジャック(共同筆名、ボアロー・ナルスジャック、アルセーヌ・ルパン)がまとめた。ピエール・ボアロー(1906〜1989)は、フランスのミステリー作家、シナリオライター。1934年推理小説「真夜中の散歩」でデビュー。1938年に「バッカスの休息」で冒険小説大賞を受賞した。トーマ・ナルスジャック(1908〜)は、フランスのミステリー作家。本名、ピエール・エロー。高校で哲学と文学の教鞭を執った後、長い間大学教授として哲学を講じながら創作にあたっていたが、やがて教職を退き、執筆活動に専念。1948年「死者は旅行中」で冒険小説大賞受賞。1948年、二人は共作による「悪魔のような女」を発表して一躍有名になり、以後ボアロー・ナルスジャックのペンネームを用いて約40年間、「死者の中から」、「銀のカード」、「すり代わった女」など100以上の推理小説や多数の評論、戯曲を発表。フランス最大のサスペンス作家と評される。

【調査過程】
■「ルパン全集」は何種類か発行されているが、どの全集かを確認すると『怪盗ルパン全集』全30巻(モーリス・ルブラン著 南洋一郎訳 ポプラ社 1980)である。
■『怪盗ルパン全集』26巻「悪魔のダイヤ」の、訳者南洋一郎による「はじめに」を見ると「これはアルセーヌ=ルパンの原作」であると記述あり。
■『怪盗ルパン全集』27巻の「はじめに」には「……モーリス=ルブランののこしたメモが発見され、それをもとにして有名な新進推理作家が書いたもの……」との記述。28巻の「はじめに」には「フランスの新進推理作家、ボアローとナルスジャックが書いたもの」と記述。29巻の「はじめに」には「悪魔のダイヤ」(『怪盗ルパン全集』26巻)はフランスの推理作家ボアローとナルスジャックが原作者モーリス・ルブランの遺族の了解を得て発表したが、自分たちの名前の公表を望まなかったため、アルセーヌ・ルパン原作とした旨記述。また、30巻の「はじめに」には「モーリス=ルブランのメモをもとにして、ボアローとナルスジャックがまとめた」と記述あり。
■『世界作家事典』1巻「ミステリ・冒険・スパイ」(日外アソシエーツ 1998)を調べると「ボアロー=ナルスジャック」の項があり、「共同筆名:Pierre(Prosper) BOILEAUおよびThomas NARCEJAK」とあり。ルパンとの関わりについてはふれていない。
■『最新海外作家事典(新訂)』(Gale Research 1994)のボアローとナルスジャックについて調べると経歴等の記載あり。ルパンとの関わりについてはふれていない。
■さらに『世界ミステリー作家事典』(森英俊編著 国書刊行会 1998)で「ボアロー&ナルスジャック」の項を見ると、最後の行に「アルセーヌ・ルパン名義で出版された贋作ルパン物にも、パスティーシュの名手としてのナルスジャックの手腕が遺憾なく発揮されている」とあり。また「ボアロー&ナルスジャック(ルパン,アルセーヌ)」の作品リストあり。

【キーワード】
■アルセーヌ・ルパン■モーリス・ルブラン■ピエール・ボアロー■トーマ・ナルスジャック

【参考資料】
◆『怪盗ルパン全集』27・28・29巻(モーリス・ルブラン著 南洋一郎訳 ポプラ社 1984)
◆『世界ミステリー作家事典』(森英俊編著 国書刊行会 1998)

【調査にあたって】
ルパン全集は何種類か発行されているので、質問者が求めている全集について確認してから調査にあたったが、同じような書名が多く、またピエール・ボアローとトーマ・ナルスジャック二人の共同筆名で書かれており紛らわしかった。調査の段階で、フランス最大のサスペンス作家であり、作品が数々の映画になっていたり、日本にも多く紹介されていることがわかった。

作成日:2000/3/31