? 「最後の授業」の歴史的な背景を知りたい。(一般)

【回答】

「最後の授業」は、普仏戦争の結果、プロシアに割譲されたアルザスのある村を舞台にした作品。ドイツとフランスの国境近くにあるアルザス地方は、ドイツ領になったりフランス領になったりという歴史があり、当時アルザス人はドイツ語の方言を話していた。『アルザスの言語戦争』(ウージェーヌ・フィリップス著 宇京頼三訳 白水社 1994)、『ことばと国家』(田中克彦著 岩波書店 1981)、『消えた「最後の授業」』(府川源一郎著 大修館書店 1992)に、詳しい解説がある。

【調査過程】
■「最後の授業」はアルフォンス・ドーデの短編集『月曜物語』の冒頭の作品。依頼者側ではすでに『月曜物語』(アルフォンス・ドーデー作 桜田佐訳 偕成社 1979)の解説は読んでおり、普仏戦争(1870〜1871)時代の物語であることなどは知っているとのこと。『月曜物語』の解説を確認する。
■『フランス文学辞典』(日本フランス語フランス文学会編 白水社 1974)の「月曜物語」、「最後の授業」の項を見ると、物語の概要などの記載あり。
■自館システムで「フフツセンソウ」を辞書(件名)検索するが、参考となるような資料は所蔵していない。『世界歴史大事典』17巻(教育出版センター 1986)で「普仏戦争」の項を見るが、参考となる記述はなし。
■「NDC235 フランス史」の書架に行き、直接資料にあたる。『アルザスの言語戦争』(ウージェーヌ・フィリップス著 宇京頼三訳 白水社 1994)を見て、内容を確認すると、アルザス地方はドイツ語圏で、使われていたのはドイツ語方言であり、公用ドイツ語である標準ドイツ語ではなかったことなどがわかる。
■「NDC293.5 フランスの地理.地誌.紀行」の書架に行き、『ワインと書物でフランスめぐり』(福田育弘著 国書刊行会 1997)を見ると、「フランスとドイツのはざまで」の章に「ドーデの「最後の授業」の虚構と現実」の項があり、アルザス地方の人人はドイツ語方言であるアルザス語を母語としており、フランス語は「非母語」で、この物語は「母国語への愛」を歌った物語ではないことなどが記載されている。また、参考資料として『ことばと国家』(田中克彦著 岩波書店 1981)が紹介されている。
■『ことばと国家』を自館システムで検索すると、所蔵しており内容を確認。
■また、「NDC375.8 国語科.国語教育」の書架には、『消えた「最後の授業」』があり。

【キーワード】
■「最後の授業」■「月曜物語」■アルフォンス・ドーデ■フランス語

【参考資料】
◆『月曜物語』(アルフォンス・ドーデー作 桜田佐訳 偕成社 1979)
◆『アルザスの言語戦争』(ウージェーヌ・フィリップス著 宇京頼三訳 白水社 1994)
◆『ワインと書物でフランスめぐり』(福田育弘著 国書刊行会 1997)
◆『ことばと国家』(田中克彦著 岩波書店 1981)

【調査にあたって】
小学校の国語の教科書にも採用された「最後の授業」は、明日からはもう自分の国の言葉を使えなくなってしまうという日の、「フランス語での最後の授業」の様子を描いた作品。当時、この地方ではドイツ語の方言を話しており、フランス語は使用していなかった。つまり、「最後の授業」の教室で習っていたのは、日常使用している言葉ではなかったようだ。調査の中で、この作品が日本に紹介されたのは、愛国心を高めるのに利用されたのだということがわかり驚いた。システムや参考図書類では検索できず、直接書架にあたったが、予想以上に多くの参考資料があった。

作成日:1999/10/18