? 「クマのプーさん」が、日本に初めて紹介されたのはいつか。(一般)

【回答】

Winnie-the-Pooh”の初訳は、1940(昭和15)年12月、石井桃子訳の『熊のプーさん』で、岩波書店から出された。所蔵先、現物は未確認。

【調査過程】
"■『オックスフォード世界児童文学百科』(ハンフリー・カーペンター,マリ・プリチャード共著 神宮輝男監訳 原書房 1999)で「クマのプーさん」の項を見ると、1926年の作品であることがわかる。
■『英米児童文学年表/翻訳年表』(清水真砂子,八木田宜子共編 研究社 1972)で「英米文学年表」の「1926年」の項を見ると「Milne,A.A.:Winnie-the-Pooh → 昭15」とあり、「翻訳年表」の「昭和15年」の項を見ると「『熊のプーさん』(ミルン)石井桃子 岩波書店」とある。
■自館システム、山梨県図書館情報ネットワークシステムで『熊のプーさん』の所蔵調査をするが、所蔵館なし。
■国立国会図書館による総合目録データベースで検索すると、同タイトルでは、1950(昭和25)年英宝社刊のものしかヒットしない。また、『国立国会図書館所蔵児童図書目録』(国立国会図書館 1951)、『新編帝国図書館和古書目録』(東京堂出 1985)などの冊子目録を見るが、所蔵なし。"""

【キーワード】
■「クマのプーさん」■アラン・アレクサンダー・ミルン■石井桃子

【参考資料】
◆『英米児童文学年表/翻訳年表』(清水真砂子,八木田宜子共編 研究社 1972)

【調査にあたって】
「クマのプーさん」の初訳が、戦前であることがわかり驚いた。「プーと私」(『石井桃子集』7巻(岩波書店 1999)所収)によると、石井桃子さんは、1933(昭和8)年のクリスマス・イブに作家・犬養健氏の家で「プー横町にたった家」の原書“The House at Pooh Corner”と出会い、まだ幼かった犬養道子さん・康彦さんに訳し読みきかせた。その後まもなく銀座の教文館で“Winnie-the-Pooh”を見つけ、訳しはじめる。戦争中は、敵性国家のものとして紙の配給を受けられず、絶版になった。初版については、岩波書店の原本も紛失しているとのことである。また当時は、石井桃子訳の他に、『小熊のプー公』(松本恵子訳 新潮社 1941)というものもあった。『英米児童文学年表/翻訳年表』は、「英米児童文学年表」と、1868(明治元)年から1969(昭和44)年までの「翻訳年表」を、対照できるよう見開きで収載したもの。「英米児童文学年表」には文学賞の受賞や日本語訳タイトルなどが記載。また、「翻訳年表」は「英米児童文学年表」に挙げられている作品の日本語訳初訳本を中心に、英米以外の国々の作品の翻訳も収録されている。

作成日:2000/3/31